多趣味・マツキヨの落書き帳

2013年(平成25年/皇紀2673年)1月、タイトル含めて大幅刷新いたしました。 現在、ダイエー店舗訪問記録/映画鑑賞記/即席麺試食記/ラーメン店訪問記がメイン記事となっております。画像/引用/リンク等は、ご随意に。

2020.7.5 石橋蓮司の芝居 「一度も撃ってません」鑑賞記

「チア・アップ!」が婆映画なら、「一度も撃ってません」は爺映画といえる。何といっても、今まで脇役では渋い演技をしてきた石橋蓮司の主演作品だからだ。某ラジオが明かした撮影秘話では、撮影中、あまりの役作りに職質されることも幾たびかあったそう。そこまで没入できているなら、見ないという選択肢は見当たらない。

前評判のせいもあって、館内は20名弱が座ってくれる状態。大半が長年の映画ファンと思しきひとたちで、若ものレベルはすごし少なめだった。男性優位で50代前半。当然私より年配の方々も多く見受けられた。

売れない、どころか本にもなっていない作家先生。家の中では、シジミの味噌汁をぶざまに飲む爺そのものなのだが、その彼が外に出るときはピシッと容姿を決めて、バーに、漢方薬店に、出入りする前段で、あの!大先生・北方謙三をほうふつとさせるところからして滑稽である。
予告では、作家である市川に絡んでくる人たちの相関関係が読めず、おかげで「こうじゃないかな」とした予測を大きく裏切ってくれる。市中で起こる、不可解な銃撃事件は、ヤメ検である岸部一徳が石橋蓮司演ずる市川に依頼し、それを妻夫木聡演じるプロの殺し屋が果たすというプロセスになっているのだった。あえて市川をスケープゴートにすることで迷宮入りさせる高度なテクニック。妻夫木から聞き取ったその時の状況を小説に仕立てることでさらに疑いを持たせる効果というものもある。
なにも知らないのは妻ばかり。長い付き合いの舞台女優という設定の桃井かおりとのデートを目撃して、大楠道代演じる弥生は激高する。そして行きつけのバーで市川の入店するのを待つ二人だが、市川の命を狙うスナイパーもここに乱入してくるのだった……

得点は92点だ。

なんちゃってハードボイルド作家が銃を持ったところでそれこそ「一度も撃ってない」のだから引き金を引けるわけがない。命のやり取りという緊迫した状況を数分間にわたって見せるシーンは、実際手に汗握るのだが……え、ええ????になったのは言うまでもない。
脇役街道まっしぐらだった石橋蓮司氏がニヒルな2.5枚目を演じていること自体が奇跡だし、独壇場をほしいままにする桃井、いい押さえキャラの岸部、真人間に向かいつつある妻夫木(と、ほぼストーリーに絡まない井上真央)と、小悪党という絶妙なキャスティングの堀部と江口。柄本父子もおいしい使われ方をしているし、佐藤浩市をこんな贅沢な使い方をしてしまうのだから、いやはや、監督の御威光たるや素晴らしい。
どこで修業したのかわからない若手がみずみずしく演じる作品もいいが、こんな、ちょっぴり昭和の香りもして、時代遅れな世界観で生きている人が主人公の作品も、見ようによっては実に面白い。市川のペンネームはなかなかしゃれているので(ローマ字表記で終わっていたら絶対気が付かない/そして何といっても、その時間から夜が始まる、というのが市川のスタイル)、確認してもらうといい。妻・弥生が酔っ払いながらばらすシーンを見落としても、エンドロールで確認出来ますので、ぜひ。

2020.7.5 婆&爺映画2本 「チア・アップ」鑑賞記

人間、加齢には抗えない。
どんな名優でも、かっこいい二枚目でも、絶世の美女でも、老いを止めたり、逆らったりすることは基本的に無理である。それでも一歩ずつ、死に向かい始める加齢という命題にここ最近着目している映画は意外に多い。
最近作で言えば、「ランボー ラストブラッド」もそうだ。ジョン・ランボーは、見るからに70台。若々しいスタローンはそこにはいない。「イーディ はじめての山登り」も、80代の老婆がこともあろうに標高こそ低いが山に登りたいといい出すチャレンジ映画だった。

予告の段階で、「うーん、見るべきか?」になっていた本作だが、後学のために、と思ってスクリーンに対峙する。だが、日曜日/初回の観客は私含めて3人。しかも退出しようとしたときに2人になっていた。エンドロールを見切らず帰ったと思いたいところだが……

映画の内容は、主人公であるマーサの断捨離シーンから始まる。そして向かった先は老人だけの町。自治も行われているサン・スプリングスという町である。
厄介な隣人・シェリルとのイヤイヤながらの交流が始まるのだが、ふとしたことで、マーサが自分の夢を語り始める。チアリーダーをしたかったというのだ。そしてシェリルが彼女の夢のかけらというべきユニフォームを持ちだす。この作劇もシェリルに起爆剤が手渡ったと考えると、マーサにその想いがふつふつと湧いてきて当然である。
さっそくチアリーディングクラブを立ち上げる二人。8人のハードルも何とか乗り越え、そこそこに練習もした。だが、「なりたかった」マーサ自体が本格的にレッスンを受けたわけではない。自己流で練習は始まるが、初公開となった高校の壮行会では醜態をさらしてしまう。

そこからの胸アツ展開は実際に見ていただきたいところである。問題を起こした張本人のクロエが入り込んでいき彼女たちを形にさせていくところは、贖罪の意味こそあるものの、滅私奉公・自分の夢(チア部での活躍)をあきらめてまで関わるべきと思った彼女の心の内が知りたかったところだ。
コンクールでは、7人でしかフォーメーションが組めないながら、なぜか会場は大沸騰。マーサが考案した振付が全世界に拡散するといったおまけまでついている。かくして、熱狂のうちにマーサにとって最初で最後の最も輝いた一瞬は、幕を閉じる。

得点は91点である。
末期がんを押してまでやり残したチアリーディングに打ち込む主人公のマーサに、その仲間たち。様々な困難(特に嫌がらせ)に彼女なりの知恵を絞って立ち向かっていくさまは面白い。
マーサの死後が描かれるラストシーン。全員の胸の刺繍の意味に気が付くと、彼らもアメリカ人なんだな、と思わずにはいられない。光を浴びながら表舞台に出ていく彼女たち。老い先の短さを表現しつつ、まだスポットライトは当たれるんだよ、と言っているようで、うまい締め方だと思った。
派手な描写がないのは、婆さん映画だから仕方ないし、予定調和で終わるから当然ひねりもない。こういうハートウォーミングな作品は評価も低いものだが、「ちょっとした感動はもって帰られる」から、そこそこに満足度もあるのだ。ちなみに原題の「Poms」は、よくわからない。

2020.7.4 邦画暫定一位 「のぼる小寺さん」鑑賞記

ここまで、実写系で「大傑作」に巡り合えていない2020年を過ごしてきた。もちろん「前建」は、そのスケールの大きさや、描こうとしていた真剣度などが大きくプラスに傾いたからであり、上半期邦画一位も当然の結果である。
ところが洋画まで範囲を広げると、どれもこれもピリッとしたものがない。直近作の「ランボー ラストブラッド」は、復讐の鬼と化した元グリーンベレー無双を見るだけに留まる30分が見たいだけの映画であり、「水曜日が消えた」も、中村倫也見たさの映画という風にしか評価できない。

そんな中にあって、「のぼる小寺さん」は、原作持ちながら、脚本が今や外れなしの異名をとる吉田玲子氏となれば、見ないでおくという選択肢はない。かくして、公開2日目に鑑賞と相成る。
映画通的な高年齢客はほぼおらず、ものの見事に工藤遥や伊藤健太郎目当ての観客が押し寄せた格好である。男性は全員ソロ、カップルは来ず、女性ペア1組を含めて女性やや優位の男女比。平均年齢は30代前半としたうえで、当方がまたも最高齢を記録した模様である。

ボルダリングしか見えていない小寺さん、何とはなしに卓球部に入った近藤、小寺さんの後を追うようにボルダリングしようとする四条、カメラに興味を持った田崎、学校にはほぼ来ないネイルアーチストになろうとする倉田。高校に入りたてで自分が何になりたいか見えていないこの5人の青春群像劇だったわけだが、時々で発生する、二人芝居のそのどれもが芳醇なのだ。
一番度肝を抜かれ、この作品の趨勢が決まったのは、四条がたたずむ屋上での近藤との会話だった。恋をしているとはいっても、それは「何かをしている」からであって、その本人が相手ではないのか?と問われる近藤が言葉を失うシーン。「好き」という思いをうまく表現できない、高一生らしい駆け引きが見られる。
倉田と小寺さんの絡みも秀逸だ。倉田ははみ出し者のようで、常識的な考え方の持ち主。「そこに岩があるから」をすんなり受け止められる女性であったことがあのシークエンスだけでわかるようになっている。
クライマックスの小寺さんの大会で2度まで落ちながら三度目で登りきるシーンは、倉田ではないが、「なんか泣けてくる」というセリフが出てくる前に泣けてしまったりする。二人での会話でもうならされたり、実際泣けたことも幾たびか。

得点は、見事、96点。久し振りの実写高得点(「前建」と同じ)となり、勢いだけで持っていった同作とは違う、しっかりとした書き込みや感情の吐露、丁寧な人物描写も手伝って、本作が邦画実写暫定一位となった。
ただひたすらストイックに、登るだけの小寺さんに引き寄せられ、何かを変えられていく4人。だが、誰しもが「夢の途中」なのだ。それも当然。高一で高みを知ってしまっては後々の成長は見込めない。だから、全員の成績が中途半端だったり、認められるレベルでもないことをラストに向けてわかりやすく述べている。
そして、近藤と小寺さんのツーショットで幕を閉じるわけだが、このラストシーンは、ここ最近の邦画の中でもとんでもない破壊力がある。PETのキリンレモンを分け合う二人。「か、間接キッス!!」を悟られまいとして、後ろ向きに飲む近藤。そしたら小寺さんは、椅子に体育座りをして、反対を向き、次の瞬間近藤に背中をもたれかかせるのだ!ここで終幕。近藤のことが好きになったのか、どうなのか? 答えはこれだけではわからない。だから二人のその後が気になって仕方なくなるのだ。
時々のくすぐりも意外性があったり(田崎の撮影をプラスに受け止めるところとか)、決して恋愛一辺倒ではない。だが、恋愛にしっかり向き合った層はもちろん、それができなかった方にもグサグサ刺さる作劇の妙は見ていただかないとわからない。吉田玲子氏、マジおそるべしである。
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