4月21日は、この作品の封切日だった。あえてダイエー店舗訪問を優先したわけだが、結論から言うと、「これは失敗したかな」と思わざるを得ない。
「リズと青い鳥」というタイトルと、「響け!ユーフォニアム」との関連性がどうしてもつかめなかったわけだが、Yahoo!も、ツイッターに流れる映画評も、「レディ・プレイヤー・ワン」とは違う、何か、どえらいものを見てしまった、という感想の多さに私も戦慄する。
最近の当方の映画鑑賞の一種の指標にしているのは、左翼かぶれてしまったこの人ではなく(だいたい、WEBで書かなくなった評論家って利用価値ないに等しい)、一般人ながら、月に20本近くは見ておられるであろう「物語る亀さん」のレビューである。
→ブログトップページ。
この方のレビューの最初には、ツイッターでの感想の吐露が最初に描かれるのだが、私も「そういう描き方にならざるを得んわな」と見た後なら言える。だが、見る前には「なんのこと??」という感想しかわいてこない。
→亀さんのツイッター記事。
だから、ただのスピンオフだとは思ってなかったし、逆に言うと、「ユーフォ」が一切出てこない外伝的な作品ってどうなのだろう、と思っていた(ちょろっと出てきますけど、本当にサブキャラ扱いでワロタ)。
つまり、見る前からかなりハードルが上がり、下手すると叩き落とされるのではないか、と思っていた。いくらアニメーションに精通している50代の私が見てもそこまで大持ち上げ大会になろうはずがなかろう・・・
劇場は、60人ほどが二日目の夕方回に集まった。観客層は、20-30代が中心。平均も30代後半と設定。女性が意外と少なく、萌え系ととらえられたか、あるいは、単発ものと見られた可能性もある。
だが、開始数秒。環境音/効果音の洪水が、さほど音響のよくない劇場ながら襲ってくる。そのゾクゾクする感じがタイトルの出るまでずっと続くのだ。音で魅せる映画ながら、そう言った細かい音の奏でる和音とも、予定調和ともいえるすべてがとにかくすごすぎる。オープニング早々、つかまされ、一気に引き込まれるのは、それこそ「君の名は。」以来である。
希美とみぞれという、正反対の性格の女性の話、ということになってしまうところなのだが、この二人をことさらに掘り下げようとした意図を考えさせられる。自己主張をしていないと思われがちなみぞれは、実は恐ろしく自分を持っていて妥協しない。一方の希美は、八方美人ながら、どことなく場に流されているようなところがある。二人がソロで主張し合う「リズと青い鳥」という戯曲の第三楽章の練習シーンでもそれがはっきりとわかるように演出されている。もちろん、滝氏はそれをきっちりと見抜く。さすがである。
二人の取りとめもない会話や、部活でのやり取り。それらを本来メインでないはずの彼女たちにスポットが当たるとき、そこにもドラマがあり、二人の葛藤があり、二人の想いがあり、お互いへの想いがある。そこに時折挿入される「リズと青い鳥」の物語。
どちらがリズでどちらが青い鳥なのか…二人は物語の主人公たちに自分を重ね合わせる。青い鳥を束縛から解き放ち、別れを選ぶリズの感情と、人間に擬態しながらでも、リズといることを何よりの幸せと感じていた青い鳥。
そして、何もかもが決着をもたらす、第三楽章の通しけいこが、みぞれの発案で執り行われる。ここは、1800円出しても聞いていただきたいシーンである。練習の時のバラバラ加減とは一線を画すばかりか、みぞれの鬼気迫る演奏がそこに繰り広げられる。ぶっちゃけると、ここで私は泣いてしまった・・・もちろん感動して、である。
そして二人は対峙する。このシーンはこの作品の肝である。ここははっきり言うとあまり書きたくない。皆さんの目で見て感じてもらいたいからだ。
高校三年生になっている二人。進路を決めなくてはならないわけだが、ラストシーンの二人の掛け合いは、なかなかに重みを放っている。いろいろと想像できる芳醇なラストにしたところも、本当に捨てがたい。
今までも「観てくれ」「観ないと損」と言った映画評は何度となく描いてきている。特に「やっちゃったなぁ」と思っているのが一週間程度後になったが、「これこそ初日に行っとけよ」と感じた「きみの声をとどけたい」であり、最近作であれば「さよならの朝に約束の花をかざろう」である。いずれの作品も向かっている方向は違うのだが、この作品・・・「リズと青い鳥」ほど、実写的な、いや、それをはるかに上回る映像表現力を持って世に問うたアニメーションは私は体験したことがない。
そう。ここまで成長したのである。いままで実写的題材をアニメーションで表現しても、何とはなしに「そんなことは役者使ってやれよ」という感想しか持ち上がらず、だから、一部のアニメーションには否定的に見る部分もある。だが、この作品を実写化することははっきり言って「不可能」だといっておく。それは、二人にどうあっても成りきれないからである。アニメーションがより実写的に人物を書いてしまった。亀さんではないが、「これは事件」である。
採点という、野暮な行為をこの作品には本当にしたくない。何となれば、確実に、2回目/3回目で評価が変わることは目に見えているからである。今の段階では追い切れていないという側面もある。あえてファーストインプレッションで、というなら、98点とする。だが、総合的な部分では「さよ朝」の暫定一位はゆるぎない。
人間を描き、実写的な作品が上位に入る。日本のアニメーション映画も恐ろしく進化したものである。
「リズと青い鳥」というタイトルと、「響け!ユーフォニアム」との関連性がどうしてもつかめなかったわけだが、Yahoo!も、ツイッターに流れる映画評も、「レディ・プレイヤー・ワン」とは違う、何か、どえらいものを見てしまった、という感想の多さに私も戦慄する。
最近の当方の映画鑑賞の一種の指標にしているのは、左翼かぶれてしまったこの人ではなく(だいたい、WEBで書かなくなった評論家って利用価値ないに等しい)、一般人ながら、月に20本近くは見ておられるであろう「物語る亀さん」のレビューである。
→ブログトップページ。
この方のレビューの最初には、ツイッターでの感想の吐露が最初に描かれるのだが、私も「そういう描き方にならざるを得んわな」と見た後なら言える。だが、見る前には「なんのこと??」という感想しかわいてこない。
→亀さんのツイッター記事。
だから、ただのスピンオフだとは思ってなかったし、逆に言うと、「ユーフォ」が一切出てこない外伝的な作品ってどうなのだろう、と思っていた(ちょろっと出てきますけど、本当にサブキャラ扱いでワロタ)。
つまり、見る前からかなりハードルが上がり、下手すると叩き落とされるのではないか、と思っていた。いくらアニメーションに精通している50代の私が見てもそこまで大持ち上げ大会になろうはずがなかろう・・・
劇場は、60人ほどが二日目の夕方回に集まった。観客層は、20-30代が中心。平均も30代後半と設定。女性が意外と少なく、萌え系ととらえられたか、あるいは、単発ものと見られた可能性もある。
だが、開始数秒。環境音/効果音の洪水が、さほど音響のよくない劇場ながら襲ってくる。そのゾクゾクする感じがタイトルの出るまでずっと続くのだ。音で魅せる映画ながら、そう言った細かい音の奏でる和音とも、予定調和ともいえるすべてがとにかくすごすぎる。オープニング早々、つかまされ、一気に引き込まれるのは、それこそ「君の名は。」以来である。
希美とみぞれという、正反対の性格の女性の話、ということになってしまうところなのだが、この二人をことさらに掘り下げようとした意図を考えさせられる。自己主張をしていないと思われがちなみぞれは、実は恐ろしく自分を持っていて妥協しない。一方の希美は、八方美人ながら、どことなく場に流されているようなところがある。二人がソロで主張し合う「リズと青い鳥」という戯曲の第三楽章の練習シーンでもそれがはっきりとわかるように演出されている。もちろん、滝氏はそれをきっちりと見抜く。さすがである。
二人の取りとめもない会話や、部活でのやり取り。それらを本来メインでないはずの彼女たちにスポットが当たるとき、そこにもドラマがあり、二人の葛藤があり、二人の想いがあり、お互いへの想いがある。そこに時折挿入される「リズと青い鳥」の物語。
どちらがリズでどちらが青い鳥なのか…二人は物語の主人公たちに自分を重ね合わせる。青い鳥を束縛から解き放ち、別れを選ぶリズの感情と、人間に擬態しながらでも、リズといることを何よりの幸せと感じていた青い鳥。
そして、何もかもが決着をもたらす、第三楽章の通しけいこが、みぞれの発案で執り行われる。ここは、1800円出しても聞いていただきたいシーンである。練習の時のバラバラ加減とは一線を画すばかりか、みぞれの鬼気迫る演奏がそこに繰り広げられる。ぶっちゃけると、ここで私は泣いてしまった・・・もちろん感動して、である。
そして二人は対峙する。このシーンはこの作品の肝である。ここははっきり言うとあまり書きたくない。皆さんの目で見て感じてもらいたいからだ。
高校三年生になっている二人。進路を決めなくてはならないわけだが、ラストシーンの二人の掛け合いは、なかなかに重みを放っている。いろいろと想像できる芳醇なラストにしたところも、本当に捨てがたい。
今までも「観てくれ」「観ないと損」と言った映画評は何度となく描いてきている。特に「やっちゃったなぁ」と思っているのが一週間程度後になったが、「これこそ初日に行っとけよ」と感じた「きみの声をとどけたい」であり、最近作であれば「さよならの朝に約束の花をかざろう」である。いずれの作品も向かっている方向は違うのだが、この作品・・・「リズと青い鳥」ほど、実写的な、いや、それをはるかに上回る映像表現力を持って世に問うたアニメーションは私は体験したことがない。
そう。ここまで成長したのである。いままで実写的題材をアニメーションで表現しても、何とはなしに「そんなことは役者使ってやれよ」という感想しか持ち上がらず、だから、一部のアニメーションには否定的に見る部分もある。だが、この作品を実写化することははっきり言って「不可能」だといっておく。それは、二人にどうあっても成りきれないからである。アニメーションがより実写的に人物を書いてしまった。亀さんではないが、「これは事件」である。
採点という、野暮な行為をこの作品には本当にしたくない。何となれば、確実に、2回目/3回目で評価が変わることは目に見えているからである。今の段階では追い切れていないという側面もある。あえてファーストインプレッションで、というなら、98点とする。だが、総合的な部分では「さよ朝」の暫定一位はゆるぎない。
人間を描き、実写的な作品が上位に入る。日本のアニメーション映画も恐ろしく進化したものである。