十津川警部シリーズは、「トラベルミステリー」と銘打つだけに、いかに列車や関連施設が事件に絡むのかが焦点である。年始に放送された作品では、運転停車を大胆にトリックに採用するなど、「そんな奴オレへんやろぅ」を地で行ったためにがっかり度はハンパなかった。

今回は、秩父鉄道の「パレオエクスプレス」が舞台になったわけだが、結果的にこの列車がアリバイ工作に利用された、というものであり、車内でどうとかはまったくなかった。それにも増して、今作では、「既に犯人が捕まり、裁判に向けた証拠固めが紛糾して公判が維持できなくなる」という事態に十津川チームが挑むという、謎解きプラス真犯人・黒幕の存在を暴くという手法を取った。

これまでの作品は、裁判過程で証拠を固めないといけないというぶざまなことになったことはなく、ドラマの中で完結して「そっから先は知りません」で済んでいた。新任検事の仕事ぶりと、「勝てる」と判断しての序盤から一転、ぼろぼろと出てくる新事実に翻弄される捜査本部。そして新たな殺人。犯人が別にいると思わせる犯行グループのやり方は、結果的に他に恨みに思っている何人かをクローズアップする時間の無駄を生み出した。
そして弁護側の猛攻が始まる。証人の死去がすべて計算づくであったかのように。防戦一方の捜査陣の、証拠固めは結審前日まで続き、結果的に「ビデオが後日とられたもの」「防犯カメラにとんでもない共犯者が映っていた」などにたどり付くことになった。

最終盤の、「主犯」である弁護士の心情の吐露は、弁護士といえども人間なのだな、を想起させられるのだが、二人も殺してしまっているだけに、また情状の酌量も考えにくいだけに、感動もさることながら、踏みとどまれなかった弱さを露呈しているに過ぎず、正直そんなに時間的に必要だったのかな、とおもわざるを得ない。

さて、この作品、最後の車の特定などにも防犯カメラや高速道路上のNシステムにも言及していた。な・の・に。犯行が行われた当日の熊谷駅の防犯カメラの映像の分析は行っている節が見当たらなかった(翌日のアリバイ工作時にはばっちり映ってしまっている)。これがあれば、第一の殺人を犯したのはその人であるというのがすぐに知れるし、秘密の暴露も出来ていることから、真犯人であることは揺るがないはずである。かように、映像化すると突っ込みどころというのはどうしても避けられないわけであり、また、捜査担当者が証人として呼ばれるというのもありえるのかな、と思ってしまったりする。

ちなみにキーワードになる洗濯物。なんと序盤・17分くらいに亀井がぼそっとつぶやいている。これを伏線にしたというあたりはうならざるを得ない。無理な設定もなくはなかったが、まあこんなものだろう。