日本シリーズは、これまで、セ高パ低というイメージが強く、実際、巨人がV9を実現できたのを始め、セントラルリーグのチームの強さが際立っているように感じる(ちなみにセントラルの35勝、パシフィックの28勝)。

しかし、ここ数年来の交流戦の際に、パシフィックのチームがセントラルのチームをコテンパンにやっつけるシーンがそこかしこで展開され、「意外とパのチームも力をつけてきているぞ」と思うファンも結構いると思われる。ちなみに2003年からの10年間でパリーグチームの日本一は7回となり、感覚的なものだけではないことも立証されている。

そんな、パリーグ強し、を改めて感じた試合がこの日本シリーズ第5戦だった。
2点リードの楽天に追いすがる、村田のホームランで一点差。9回裏、中四日の則本に襲い掛かる巨人打線は同点どまりまでしか追いつけず、逆に楽天は4人目・西村の制球難に付け込み、2点をもぎ取り見事逃げ切った試合だった。

この試合、特に後半にそのキーポイントが隠れている。10回表、西村の制球難が楽天・藤田へのデッドボールを呼び、しかし、満足に走れないはずの藤田は痛みをこらえながらグラウンドに戻る。次の銀次のタイムリーでも引きずるような走塁。3塁ベース上で痛みをこらえる藤田を呼び戻し代走を送る星野監督。直後にジョーンズがぼてぼてのあたりを全力疾走して、内野安打にし、その間に変わった代走を迎え入れて追加点とした一連の流れである。

ここに、楽天の持つ「魂のこもった野球」−−興行を超えた、勝負に対する真剣さというものを見せ付けられ、一種じわーっと感動してしまった。
そもそも今年の日本シリーズは、一点を争う好ゲームばかりで、見ているほうも野球の面白さを再認識させられている。

そして、いよいよ、仙台に戻っての決戦が行われる。後ひとつでいい楽天があの、田中投手で来ることはほぼ確定であり、負けられない巨人としてもほぼ同等の投手を用意しないといけなくなってしまった。第5戦を勝ち王手をかけたほうが日本一に分がいいというデータもある(2009−2012まで、5戦目で王手をかけたチームが日本一になっている)。本当に星野氏がこの土曜日、仙台の空を見ながら宙に舞うという夢がかなうかも知れない。