2013年の紅白歌合戦は、そういうわけで、なかなかに面白かったと思う。
分刻みの視聴率結果もいずれ明らかにされることだろうと思うが、やはり、2013年を飾った朝ドラの番外編を持ってくるという、今までの紅白史上、ありえない演出がかもし出されたことは特筆に価する。

大ヒットした朝の連続テレビ小説のヒロインたちが審査員をするといったことは今まであったし、また、曲の応援と言う立ち位置で絡むということは幾度となくあったが、歌やアイドルがある種主題でもあった「あまちゃん」の、紅白との親和性は極端に高かった。仮に歌だけで構成されていても、なんら驚くに値しなかったのだが、あえて「157話」とした上で、登場人物(特に北三陸側)がほとんど登場し、小芝居まで披露。あまちゃんの最終回以後の後日談的にストーリーをきっちり組んだこの演出振りにはすごいを通り越して、感動してしまった。

脚本担当の宮藤官九郎氏、夏を演じた宮本信子(+カメラ小僧の俳優)が見守る中、ついにユイは、念願のステージに立つ。時代と時の流れに流された結果デビューできたアキとは違い、ちょっとした歯車のせいで自分の夢がかなわなかったユイの溜飲が下がった瞬間でもある。そして、裏方に徹していた天野春子の歌声も聴くことができた。あえて役名で出演することに意味があるし、それらを含めても、小泉今日子/薬師丸ひろ子の紅白出演はエポックでもある(ちなみに役名で登場したと言う記録は残っていないため、GMT/潮騒のメモリーズ/天野春子/鈴鹿ひろ美 すべて広義には初出場と言う扱いになる。厳密には、コーナー内の歌唱と言うことで出演歌手に含まれていないのはそういうわけから)。

9月に放送が終わってからの3ヶ月あまり。ここまですごい演出を紅白にぶち込んでくるとは予想だにしなかった。
完全に北三陸に意識が飛んでしまった人も多くいただろう(リアスのセットは当然NHKホール内。そんなことは分かっていると言いながら、北三陸市なんていうテロップでだまされてしまう人もいただろう。ちなみに今回、某国のメーカーのタクシーは登場せず、無難にクラウンでした。よほど堪えたのでしょうかwww)。

コラボレーションの良例として、この先何年も語り継がれることになるであろう「あまちゃん特別編」。しれっとやってのけている、と苦労を微塵も感じさせない宮藤氏の底知れぬパワーに脱帽すること、しきりである。途中でねたのできなかった鉄拳氏の、オープニングテーマに乗せて披露されたパラパラ漫画もすばらしい出来であったことを付け加えて終わりとする。