戦争のシーンを否応なく内包しているにもかかわらず、依然として高止まりの視聴率で健闘している「ごちそうさん」。1月/2月の、ちょっと中だるみな部分をも乗り越え、最後の最後に和枝の「いけず」が生きてくるという、本当にここまで練られた脚本と言うものがあるのか、とさえ思ってしまう。

「比較検討倶楽部」とは銘打っているものの、こうまでいろいろと条件が違いすぎるのでは比べようがない、と言うのが実態である。しかし、今回私は、キャスティングの面から前2作(「純と愛」「あまちゃん」)を比べてみようと試みた。
その結果、「ごちそうさん」に限って言えば、超A級の役者が最後まで絡みきった、と言うことがないところが浮き彫りになったのである。

「あまちゃん」は言わずとしれた、宮本信子と言う大女優に薬師丸ひろ子/小泉今日子と元アイドルまで総動員。一方、「純と愛」も若村麻由美や森下愛子といった著名どころが脇を固めていた。ところが、「ごちそうさん」は、確かに登場はしているものの、ほとんど重要で長期間にわたる絡みもなく、退場しているのである。
そのことは、イコール「生と死」を純粋に提示していると考えていい。実際、吉行和子演じるめ以子の祖母は、一週目で退場、途中で素性を明かさず登場した悠太郎の父親役の近藤正臣も戦争を知らぬ間に逝ってしまう。かような風に、登場人物は、息子の活男をはじめ、戦争や関東大震災で次々死んでいる。唯一、宮崎美子が一番長く関わっているわけだが、正直彼女しかいない、と言う感じである(西門家の離散に伴い、今後どうなるかは不明)。

ここでピーンときたのである。「あまちゃん」のストーリーは、一種の押さえキャラでもあった宮本信子なくしては、成立しにくく(いるからここまでヒットしたと思っている)、逆に「ごちそうさん」は主役である杏のドラマであって、ほかは脇役に徹してもらいたい、と言うストーリー立てにしてあると言う点である。
その見方をしながら、ドラマを思い返してみると、確かに、「あまちゃん」は、本当に能年嬢が主役だったかな?と思われる節が往々にしてある。それに比べて、「ごちそうさん」は、せりふの上でも主役然としたところが垣間見える。なき、笑い、怒り・・・。感情の発露は、仰々しいと当初思っていたのだが、これくらいなくては主役としてはやっていけないのだろう。むしろ、女優として脱皮しつつある杏の出世作になったと見るべきである。

個性派の脇役に支えられて、いい感じに女優への一歩を踏み出した杏。当初は、私は結構危惧していたのだが、ここまでのストーリーを見てみて、なかなかうまくまとめてきたな、と感じずにはいられない。このまま行けば、20%台をキープしながら、大団円を迎えるであろうことは想像が付くが、ここまでヒットできたのは、ズバリ、「杏の渾身の演技」あればこそだと思う。やはり、主役の演技は重要なのだ。