おそらく、いまごろ、JOBK本社内には、「大ヒット御礼」と言う赤文字とともに、ごちそうさんのポスターが彩られていることだろうと思う。

とにかく視聴率だけはしっかりと稼いだこのドラマ。戦前・戦中・戦後を生き抜いたお母さんの苦労と、食にまつわるいろいろな薀蓄や時代背景なども述べられており、あの時代を振り返る/古きよき時代のノスタルジー的な見方もできているだけに、ここらあたりにヒットの要因が隠されているのだと感じている。

前作が『瑣末な情報の宝庫』であり、一種若者向けに振ったかのような演出がメインであったのに対し、ごちそうさんは、王道を歩んできた、といってもいいストーリー立てになっているところは素直に評価できる。

当方予想としては、『肝っ玉母さん』的に、悠太郎の死も伝えられ、最後は仲間とともに・・・と言う想定を、当初していたのだが、悲劇的では具合が悪いとばかりに(実際に戦地に入っていないので死ぬことってあるのかな、と思ったのがそもそも)、予想を出した直後に帰還する方向に転換。しかし、よもや最終回で、とは思っていなかった。

離別→再会、を最終回に持ってくるやりかたを、それも途中からすると、それ自体が主体になってしまい、ほかのストーリーが生きなくなってしまう。実際、源太のプロポーズのシーンも、カレーを引揚者に配るシーンも『福神漬け』状態になっている。むしろ、15分間、再会のシーンに当てて欲しかったくらいである。

豚の登場には度肝を抜かれたが、こういう演出があるのが今回の面白さ。まあ、一種の『露払い』的な存在であり、もうフラグは立っているのだから、それほどでもない。大団円を最後、仲むつまじく、チョコレートを食べるシーンでエンディング、としたところは、ホッコリさせられるし、『夫婦の絆っていいな』を再確認させてくれた。

そろそろ結論。ホームドラマではあるものの、主役の杏の演技が際立つ作品であった。既に書いている通り、脇役にはそれほどの役者を配置せず、その結果、たださえ身長が高く、目立つ杏を際立たせる作戦は見事に嵌った、といっていい。息子や恩師の死はあったものの、そういう不幸を乗り越えていくのだというところが提示されていただけでもポイントは高い。最後も考えようによってはうまくまとめたとしておきたい。

さて、次回作・・・吉高主演と言うことと、何かしら既に不協和音が聞かれている現場サイドからの報告が週刊誌をにぎわせているようである。確かにここ最近、露出度の減っていた吉高。ヒット作にできるもできないも主役次第なのだが、彼女の演技でそれが可能かどうか。次回作は私的には『見送り』ムードがちょっと高い。