<小説仕立てです。>

…眠っていたようだったが、何気に周囲は暗くない。雑踏とも何とも言えない場所をうろうろしていると、目の前から、見覚えのある顔が…
「おお、マツキヨ君やないか」
破顔一笑で右手を上げながら近づいてきたその人は…すでに鬼籍に入っている、中内功氏、ご本人だった。
こんなところで会えるとは…しかも私の名前を知っているって?いろいろおかしなところは目につくのだが、夢の中の話なので、整合性が付かなくて当たり前である。
「やぁ、これはこれは…」と応じる私。不遜にもほどがある。まあ、これも夢の(ry
マツキヨ(以下、マ)「こんなところで会えるなんて、光栄です」
中内(以下、CEO)「まあ、それもそやろ。一般人の間ではスーパーの鬼やら、ひどい書かれようやったが、実際にあってみてどうや?」
うほwまさかの逆質問。だが、世間体を気にしているCEOらしかった。
マ「い、いぇいぇ・・・。こういっては何ですが、おしゃれなおじいさん、としか映りませんよ」
CEO「ハッハッハッ、そうかね、そんな風に見えるんかね…」
お亡くなりになったのは御年83歳(10年前)。確かに元軍人らしく、きりっとした立ち姿だったが、老いの面は否めない。
CEOの笑いがことのほか私を気分良くさせた。
マ「ええ、今からでも第一線に復帰できますよ」
大きく出たものである。それでも真に受けたのか、
CEO「そうか、そんなら、どこの店に行ってみようか」と大乗り気。
マ「いや、それはさすがに、ちょっと…」
また、「商売の虫」が騒ぎ出さないか、と思って、火消しに回る私。
CEO「いや、冗談冗談。もう縁もゆかりもない身の上やからなぁ」
実際、流通科学大学以外にかかわりを持っていなかった晩年。大きくした反動とそのあとの納得いかない処理に頭と心を悩ましていた時期があったのは間違いない。阪神淡路大震災が彼の寿命を縮めたとしても、あながち間違いではないと思う。
CEO「それはそうと、マツキヨくん」
ふと顔を覗き込むようにみたCEO。
CEO「今日会えたのは、私に聞きたいことがあるから、と違うのか?」
会えたことで舞い上がっていた私を見透かすように問いかけたCEO。私は、思い出したように問いかけた。

マ「もうすぐ、ダイエーという名前のお店がなくなるのはご存知ですよね…」
CEO「それで?」
マ「どんな風に思っておられるのか、と…」
CEO「なぁんや、そんなことかいな、もっと深刻な話やとおもとったわ」
その軽い口調が逆に私を驚かせた。え?あなたが築いてきたものがもうすぐ世間から姿を消そうとしているというのに…
CEO「ははぁん、私が作ったから、それがなくなるのが惜しいとか、悔しいとかおもとるって答えをききたかったんかいな、これやから、庶民感覚っちゅうのは理解できへんのやねぇ」
と言ってから、言葉を継いだ。
CEO「例えばGMSの退潮ぶりに気づくのが遅れたり、フルラインで品ぞろえすることが善だという、凝り固まった思想でいた私にも責任はあると思うよ。そやから、こういう事態に陥ったのも時代の流れ。ダイエーがいろいろな企業を吸収してきたのは、吸収される側に回ることを避ける意味もあったのだが、その体力がなくなってしまった今、飲みこまれる方に回るのは当然の結果なんじゃないのかなぁ」
さすが起業家でもあり、一企業の栄枯盛衰を見てきた人の一言は重みが違う。
マ「それでも、もし今、CEOに力があったら、何とかしたと思いますか」
CEOはちょっと思考しているそぶりを見せた。
CEO「・・・昔みたいに「わたしが担保です」とか、大見得を切れなくなってるからねぇ。それに、もうダイエーは、「中内商店」ではなくなっているから、私に力があっても、どうにもならなかったと思うけどねぇ」

とりとめのない会話が続いた。
マ「ダイエーって復活しますかね?」
CEO「ははは、無理無理。素人目に見ても売り上げも利益もイオンさんにとられていく、衰退していくしかない老衰化した企業が健康体に戻れるわけがないでしょうが、私みたいに」
たまに、こういうジョークを入れられるところが関西人でもあり、CEOの人となりでもある。
マ「そうですか…」
創業者が言うんだから間違いない。私は一種暗澹たる気持ちにとらわれた。
CEO「まぁ、強いてあげるならば、私のもっていた矜持を失ってしもうたら、その時点で企業としてのダイエーは終わることになるやろね。『ねあか、のびのび、へこたれず』やら、「For the Customers」やら、商人としての心構えっちゅうんか、できて当たり前のことができる企業になれたら、イオンの傘の下でもそれなりの影響力を発揮できると思うけどねぇ」





ここではっと目が覚めた。
以前のブログで書いた、「草葉の陰で、CEOがどんな風に思っておられるのか…聞けるものなら聞いてみたい」が夢の中とはいえ実現してしまった。

仮に今CEOがご存命であったとしても、すでにグループから手を引いていること、創業者の立場でしか発言できず、影響力も限定的とみるのが普通である。ようするに、イオンに蹂躙される様を指をくわえてみているしかないというのが本当のところである。これは彼にとっては屈辱以外の何物でもなかったはずであり、「飲みこまれて当然」と平然と言い放てたかどうか、はさすがにわからない。
片道切符で旅立とうとしているダイエー。一時代の終焉はすぐそこまで来ていると実感しつつある。