筆者注:12/30 一部記述を修正してあります(当初投稿日:12/6)。

一応、「なぜ「君の名は。」はヒットしたのか?」シリーズは10タイトルの記事をもって作成を終了した。

12月に公開なった中国では、すさまじい入れ込みが発生し、今までの日本映画の興行成績をもまたしても塗り替える快挙を達成(以前は「STAND BY ME ドラえもん」だったそうだ)。中国マンセー的な「カンフーパンダ」が上位に位置しているのがいかにも中国らしいが、こんなラブストーリーに耐性のない中国人がこの作品を見たら、本当にヤヴァイことになりそうな予感しかしない。

2016年12月5日…既報通り200億の壁をこじ開けることに成功。いや、この突破は、監督にとっても製作者一同にとっても、凄いハードルになることは間違いない。
→あちこちにそれらしい記事はありますがひとまずITmediaニュースより。リンク先はYahoo!

今更、この作品を後追いのように見る人はそうそういないと思われるのだが、仮にそういう人が「どこが見どころなんだろう」と思った時に、これだけのヒット要因があるということをまとめておくのも悪くないかな、ということで、当該シリーズのタイトルをメインに「この記事だけ読めばすべて解決」仕様のまとめを作ったという次第である。

・「誰もの全力が感じられる作品力」(その1)
早々と結論が出てしまっている。もともとここまでいろいろな要素に対して解析するつもりもなかったのでこうなったわけだが、一言で言うと、なら、このワンフレーズで終わる。
・「ヒットするべくして揃ったスタッフたち」(その2)
ジブリ出身者の妥協を一切しない作画/透明感あふれる風景/演者の魂を揺さぶらせる好演/場面によりそう劇伴・音楽…配給元が「10億くらい」と当初設定していた興収とは何だったのか?
・「物語の厚みを増す伏線」(その3)
組紐、ムスビ、たそがれ(誰そ彼=カタワレ)時、口噛み酒…まだまだ知られざる伏線はあるはずだ。だが、それらすべてを回収しきっている。
・「音楽の存在」(その4)
RADWIMPSの楽曲/劇伴が映像を際立たせている。無理もない。映像にマッチングするような曲・詩作りをしていたのだから。
・「年代を越えた支持」(その5)
1600万人を超えいまだに週30万人超。一巡しているはずなのにいまだに見られているのは、確実にリピーターの存在があるし、それは多分に高年齢層でもある。
・歌詞のもつメッセージ(その6)
主題歌とされる4曲(なんでもないや、にはエンドロール直前のmovie editが別にあり、これも歌詞が恐ろしく二人を言い表している)の効果的な配置とその内容。いまだにスパークルのピアノソロを聞くとウルッとくる。
・議論をさせる時間の描き方(その7)
タイムリープものである、と最初気が付かない観客。これこそ、うまく感動を引き出す舞台装置でもある。だがどうしても時間をいじると疑問も出てくる。そしてそこがまた論議を呼ぶ好循環を生み出す。
・メッセージ性(その8)
人間の記憶の儚さと、そこに抗い、歴史をも変えてやろうとする二人の意思・・・。ムスビのもつ意味合いも深いところで我々に訴えかけてくる。
・普遍性(その9)
言葉が通じないところでも大ヒットしてしまう本作。そこに見え隠れするのは、映像と音楽『だけ』でも十分に描けている/相手に伝わるというグローバルスタンダードだと思う。
・リピーターの存在(その10)
複数回観た人がいないとここまでの観客動員には至らない。そして堅調に推移している動員数がそれを物語っている。

ヒットするには理由がある。
その理由をいちいち述べていったわけだが、逆を言えば、ヒットしない/客を呼べない映画には、私の挙げた要素が複数個…あるいはすべてが欠落していると結論付けても言い過ぎとは言えない。

純愛ラブストーリーは実写の定番ネタであり、映画にすれば必ず客は呼べた。「あす僕」もその例にもれず、堅調に推移している。だが、アニメーションは、「アニメーションで表現できるネタ」に特化してしまっていたこともあり、あえて人間でできる純愛ものにはチャレンジしてこなかった。仮にあっても、ここまでのヒットを記録することは無かった。
それでも「君の名は。」は、いまだに客を呼び続けている。100億は本当に道程の途中だったが、200億越えはまさかの展開。瀧と三葉が挑んだように『越えられない壁』を超えうるのか…当方もまだまだ注視を止めないつもりである。