一度目の「2013.10.4」には、抗うことすらなく、歴史に流されていくだけの三葉。もちろん、それは自らと、仲間たちの死というものを提示してしまう。

だが、17歳の瀧が介入した「2013.10.4」は、あきらかに「今までとは違う」歴史が紡がれようとしていた。
友人たちを巻き込み、一大避難計画をぶち上げたのだ。変電所を爆破し停電を起こせば、非常用電源に切り替わり、それを契機に非常用の防災無線も使える。その間に住民を避難させるべく町長である父・宮水トシキを説得する、というのが筋だった。

ところが…
父・トシキは、彗星落下を全く取り合わないどころか三葉を病気扱いまでしてしまう始末。結局説得工作は失敗に終わる。

いやあ、よくできた筋書きだな、と思ってしまう。
二葉に死なれてからの父親の荒れ様は「口噛み酒トリップ」で幼いころの三葉の記憶として描かれているわけだが、宮水家を出ているのに旧姓を名乗らず(これは娘たちに配慮したものと推察する)、政治家として町長になれてしまう。そう!!町議会議員を経て、とかなら順序立てているからわからないでもないが、政治のずぶのシロートが町長になっている…少しだけ恐ろしさを禁じ得ない。

だが…
もし、もしもですよ、「宮水トシキは、糸守町を救うべく町長に”させられていた”」と考えると話は変わってくる。
その答えに近づくことができる存在こそ、彼の妻でもあり、三葉・四葉の母、そして一葉が生んだ宮水二葉その人である。
いきなり二葉の話が出てきて、混乱している人も多かろう。四葉を生んだのち、ほどなく死去する二葉。だが、もし父・トシキが、彼女の遺言、もしくは未来の預言的なことを聞かされていて、「町長になっておかないと未来の災害を防げない」と思って神社を出、政治の道に走ったのだとすれば・・・ちょっとだけわからないでもない。
だが、この説はあまり説得力がない。それは三葉の言い分を一度目は完全に拒絶しているからである。心の奥底に、愛する二葉の言葉が一かけらも残っていないほど父は変貌した、とは言えないからだ。それどころか、彗星が来る、となった時に自ら動いていてもおかしくないくらいである(糸守湖が隕石湖であること、1200年前の出来事とするなら、同じ彗星の可能性すらある)。

見えざる力(人的被害を最小限に向かわしめる)が彼を町長に押し上げた、としても、結局「災害を予測できていない」のであれば、でくの坊である。もしかすると、神職を離れてしまったがためにそうした神通力的なものが潰えてしまったのかもしれない(婿養子であり、よその血であるとはいえ、もし神職であり続けていたら、この結論が出されていたかどうかもわからない)。

そもそも、「画面上でも、小説上でも、情報が圧倒的に少ない」せいで、彼が町長になった経緯が全く持って分からない。その結果、「町長にさせられた」説も「進んで町長になった」説も、どちらもありといえばありなのである。

ストーリー上、町長が父親であったことは「一種のラッキー要素」といえなくもないのだが、最悪の状況を回避できる”キャスティング”はこれしかない、といったところなのだろうか…

解析結果<未解決>:
宮水トシキの半生が語られないと、彼がなぜ政治家=町長になろうとしたのか、はわからない。このストーリーは瀧と三葉の物語であり、重要脇がたまたま町長だったというレベルに終わる。都合がいい相関関係だが、「このタイミングで父が町長」だったことは奇跡と扱うにふさわしい。

筆者注:父親の名前は役名(トシキはカタカナ)に統一しました。