日本で大ヒットした映画がハリウッドを擁するアメリカで公開される。
映画人にとって、この一種凱旋的な公開に至れる作品は、日本でも作られる映画の何分の一でしかない(当然、アメリカで作られた映画すべてが日本に入ってくるわけでもないこともまた事実)。

日本で作られた、2Dアニメーション映画の北米公開は、当然本作が初めてではない。実は、日本アニメの最高興収を上げた作品は、「ポケモン」映画だった。(「君縄」興行スレより)

Rank  Title (click to view)  Studio theaters Lifetime Gross Date
1 Pokemon: The First Movie  WB  3043  $85,744,662   11/10/99 ☆ポケモン
2 Pokemon: The Movie 2000  WB  2752  $43,758,684   7/21/00 ☆
3 Yu-Gi-Oh! The Movie     WB  2411  $19,765,868   8/13/04 
4 The Secret World of Arrietty BV 1522   $19,202,743   2/17/12 ★ジブリ
5 Pokemon 3: The Movie    WB  2675  $17,052,128   4/6/01  ☆
6 Ponyo              BV  927   $15,090,399   8/14/09 ★
7 Spirited Away         BV   714  $10,055,859   9/20/02 ★
8 Digimon: The Movie      Fox 1825   $9,631,153    10/6/00
9 Dragon Ball Z: Resurrection 'F FUN 913  $8,008,363    8/4/15
10 The Wind Rises        BV  496   $5,209,580   2/21/14 ★
11 Howl's Moving Castle    BV  202   $4,711,096   6/10/05 ★
12 Dragon Ball Z: Battle of Gods  SV 692  $2,553,002   8/5/14

13 Your Name.          FUN  311  $2,421,860  4/7/17

14 Princess Mononoke      Mira 129  $2,375,308   10/29/99 ★
15 Pokemon 4Ever        Dim    $1,727,447   10/11/02 ☆
※この図表作成中のランク/興収を記載

ドル記載なのでピンとこないかもしれないが、8500万ドル、といえば、現在アメリカで公開中のパワーレンジャーあたり。ちなみに初動である初週(1999.11.12-14)の入れ込みは3100万ドルで並み居る強豪を押しのけて「全米一位」!!この記録は日本映画でも早々達成できる類のものではない。
もちろん見ていただくとわかるようにほぼ全米規模と言える3000館オーバーでの公開。ゲーム全盛期であり、当時のお子様は全世界的にポケモンブームだった。だが、潮を引くようにブームが終焉していることが、続編の推移を見るだけでわかるところが面白い(8500→4300→1700→172)。

話題を戻して「Your Name.」。日本で公開が終わっていてもおかしくない4月の北米公開は確実にアゲインストに働くと思っていた。それでなくても、本場アメリカでは話題作が目白押し。特に日本ではGWにえらいことになりそうな「ワイルドスピード アイスブレイク」の公開をこの週末に行いまさにロケットスタート。それに隠れるような、小品扱いのこの作品が稼げるわけがない、と誰もが思う。
ところが、である。
<表の見方は、通算公開日/現地日付/興収/上映館数/館平均/合計>
*1 4.07(金) $706,932 311 $2,273 $*,706,932
*2 4.08(土) $640,982 311 $2,061 $1,347,914
*3 4.09(日) $465,868 311 $1,498 $1,813,782
*4 4.10(月) $172,679 311 $*,555 $1,986,461
*5 4.11(火) $210,978 311 $*,678 $2,197,439
*6 4.12(水) $227,521 311 $*,732 $2,424,960
*7 4.13(木) $211,097 311 $*,679 $2,636,057
*8 4.14(金) $241,540 292 $*,827 $2,877,597
*9 4.15(土) $297,788 292 $1,020 $3,175,385
10 4.16(日) $194,394 292 $*,666 $3,369,779 (興行スレより転載/日付間違い修正)

何より注目は4/10〜4/12までの推移である。平日であるにもかかわらず、前日より伸びているということである(映画は初動に偏りやすいのだが、日本アニメオタクがこぞって鑑賞後、そこで得られた絶賛に、後追う形で一般層が追随を始めた証左。木曜に落ちているのは4/14から始まるイースター連休の前日だから)。

そして、公開10日を待たずして300万ドル(=3億円、と概算)を越えてきた。オープニング興収からして、400万ドルはありか、と思っていたが、その前段階と言える300万ドルを比較的早い段階で越えたのは正直大きい。規模や期間は下手すると4月いっぱいまでやっていなさそうな雰囲気を漂わせているのだが、むしろ、ほぼ最後になった北米公開と日本の公開がほぼ同時に終焉するとなると、この後の円盤発売ががぜん注目を集めそうである(年内の可能性が高まった)。

たった3億程度。日本の250億弱、中国の8300万ドル越えに比べると、しょぼすぎて話にならない。とは言え。そもそもアメリカでの公開そのものの計画があったはずがない。そしてすでに記事にもしたが、この映画のもつ普遍性が欧米人にも届いている。この功績は大きい。今まで所詮アメリカの日本アニメオタくらいしか知らなかった「Makoto Shinkai」の存在が世に知らされただけで、十分だと思う。
名刺代わりのアメリカ公開。批評家の絶賛ぶりとは少し趣の異なる興収なわけだが、大コケレベルで終わらなかったところはとりあえずよかったといえる。群雄割拠のアメリカにおいてここまでの善戦ぶりは当方の「想定の範囲外」である。