またしても記録の現出である。
2017年5月は、この記事作成時点で、月間だけで4タイトル(乙女/君縄/メッセージ、そして本作)。いままでスクリーンから遠ざかりまくり、どんな話題作が出てきても見向きもしなかった数年前の私とは完全に変わってしまっている。16週連続で劇場入りという連続記録も継続中。次週に予定される6/1のサービスデーあたりで別タイトルを見ようと考えているので、17週連続もほぼ確実とみられる。

さて、アニメーション映画ということに限定すると今年だけで、4タイトル(君縄/モアナ/乙女、本作)。5タイトル目が「メアリ」か「花火」かが運命の分かれ道になりそうだが、まあ、今までの状況ならすでにお腹いっぱい状態なのだが…やはり「君縄」効果は絶大。劇場で見て感動できる作品ならその金額は決して高くはないと教えていただいたからである。

そう思って、公開まなしの本作をターゲットにする。すでに前作「夜は短し歩けよ乙女」は、点数に逡巡しながらもなかなかの高得点で鑑賞を終えた。しかも今回は、ご本人原作。それならば、と期待度はかなり上がってのスクリーンとの対峙となった。
ところが・・・
西宮OS/16:30の回はびっくりするくらいの閑散ぶり。当方の鑑賞記で一けたは、実写版パトレイバー以来。6人/男女比ハーフ/30代後半と単純に描かざるを得ない観客データでため息が出る。
もはや当方のベンチマークになっている「君縄」なら、こんな133席程度の場所など、公開初週で満席にするのなどいともたやすいこと。それが6人…まあ、平日のレベルだから仕方ない部分がありこそすれ、この閑散ぶりに少しだけ外れの予感がよぎる。

ストーリーは、中学生時代のまさしく中二病を拗らせようとしている、バンドしたくて仕方ない二人。そこに、実は音楽センスもある主人公がからむ形でスタートする。陰鬱で、自己主張もない主人公に、転機が訪れるのは、音楽をスピーカーで流しているさなか、突如現れた人魚の子供・ルーだった。
音楽を聞くと2足歩行できる/意思疎通も簡単ながらできる/水の塊を自由自在に操れるなどファンタジック要素満載。人間と触れ合うことに興味津々な彼女。バンドともかかわっていく。
周知されていくにしたがって、人魚は厄災の代名詞のように扱われる。そもそも人魚に襲われて死んだとされる関係者の発言がそれを裏付けて行く。そしてルーは、最後囚われの身になってしまう。
それを知る父親。まあ普通あれだけの体躯/日向を極端に嫌うなど人魚的な部分が見え隠れするのに、誰も疑義を唱えないところに違和感は感じるが、死を覚悟しながら、彼はルー救出に向かう。このあたりの表現は、もっともっとリアルでもよかったのにと思う。
そこからは、クライマックスに向けて、一気の伏線回収。立て続けに「あの事象の結末は」「本当は○○」「傘も実は重大なアイテム」などということを畳みかける。むしろ、あまりに流れ込み過ぎて、処理しきれない人もいたのではないかと思う。
ラストシーン。ルーに好きだといえる主人公。だがその告白も、彼女が消えたかのように描かれることで若干消化不良に映る。だが、今まで町を覆うようにそびえていた岩の消滅で、町は新たなステージに立とうとしていた。

さて得点だ。実は前作「夜は短し…」の方が、ノンストップぶりがよく、むしろ我々に考えさせずに突っ走ったあたりが心地よかったわけだが、どうしても「実際の人間世界」がファンタジーの中に絡んでしまうと興ざめする。とくに水産会社の祖父/父親の人魚に関する対立ぶりは、滑稽を通り越して、憎悪すら感じさせてしまった。そうなると、やはり基本善人/全部コミカルな演出で済んでいた前作とは全体的な評価を下げざるを得ない。というわけで、当方は、80点とする。

確かに感動するところはあった。「ああ、そうもってくるかぁ・・・」緩みやすくなっている涙腺がまた刺激された。だからもう少し配点があってもいいかもしれない。だが、全体像であり、第一印象である作画・キャラデザのレベルの低さに唖然とする。序盤、キャラも決まっていないからだろうか、作画崩壊一歩手前の稚拙な描き分けに「あ、これ、アカン奴や」となりかかった。序盤からこれではどうにも高得点になりようがない。要するに、ここまでの高得点は、最後半の演出だけの得点と言い切ってもいいくらいである。
「メッセージ」と同じ得点。「片隅」より下になってしまったのは、ひとえに芸術性の欠如にある。もうちょっと、絵にお金をかけてほしかったし、そこにもしっかり手を入れていれば、もう少しはよかったのにと思う。もちろん、ミュージカルを思わせる、祭り/ラストシーンの一同ダンスのシーンなどは、大昔のアメリカナイズされたアニメをほうふつとさせ、なかなかに面白い演出。コミュニティバスのありえないドリフトシーンなども「マジかよ」と思わせるのに十分。光る一手がないわけではない。
湯浅監督は、世界観を生かして撮る監督さんのようだ。これはオリジナルであるがゆえに、「どこを大事にすべきか」がわかりにくくなってしまったのではないか、と思うのだ。前作が、敢えて独立した3つのストーリーを連結させたことで奥行きが生まれたことなどは、監督の読みこむ能力が発揮された一因とみる。
ヤフーのレビューも、少ないながら、あまりほめる文言は少ない。曰く、「ポニョ?」の声が多数wwwまあ、これは想定内。「とっ散らかった」「ぶつ切り」という声も。ストーリーが一か所に留まれないのはこの場合仕方ないかと。

まあ人魚ランドとか、脇筋に時間を割くくらいなら、もう少し、ルーと主人公との心温まる交流などがあったらよかったのに、と思う。材料過多にした代償は大きかった。