まず先に結論を書かせていただく。
ずばり、「シロートにはお勧めできない」(ゴノレゴ 談)内容である。それは、胸糞シーンや唐突な暴力、「誰が」やったかがわかりにくくしてあるなど、その世界観がかなり暗く陰湿だからである。

もちろん、それは半分想起したうえで見に行ったところはある。何しろ、一応「アカデミーノミネート作品」だからである。アカデミー候補にあげられるというのならばよほどの練られた脚本やら、演出やらがあるんだろうな…
だが、実際には、「くそ野郎」やら、「ビッチ」やらが随所に出てくる、お世辞にもきれいな作品とは言えない。

しかも未解決事件はそのままに「別」の悪を退治しに行こうとする人物たちは、それこそ他にやることがあるだろうに、と思わずにはいられない。初動捜査のいい加減さを主人公が断罪する場面もあったが、真剣な謝罪とは受け取られなかった。

さて、そろそろ本題に入る。
この作品を絶賛している人もいる。それはそれで構わない。だが、私はどうにも、もろ手を上げて賛成、とは言えないのだ。
何しろ、主人公の傍若無人ぶりが痛々しいのだ。そもそも、自分の娘が殺されたことをあえて広告にするなどということがどういう結果をもたらすのか、わかっていなかったわけではあるまい。まして、署長は病気。余命いくばくもない末期がんならなおさらだ。
クレームをつけに行った歯医者のところにも押しかけ逆襲する、説得に行った神父までも論破してしまう(まあ、これはこじつけ以外の何物でもなく、神父の苦虫潰しぶりが印象的)。広告を燃やされたと知るや、警察署を襲撃する…ことによると、かなりの罪状になるのではないか、とさえ思うのだ。
もっと恐ろしいのは、ヘイトたっぷりのマザコン警官。今までの悪行から考えてもとっくの昔にバッヂを奪われているはず。そして、とうとう殺人未遂すれすれの暴行事件を起こしてようやく職を解かれる。その後の彼の数奇な人生は…考えようによっては、改心できた、と見て取れるし、良心が残っていた、とも考えられる。
でも、町は、すべてのことを飲みこんでいく。まるですべてを知っていて、誰も手出ししないかのように。そこにこの物語の矛盾している部分を見つけ出すのだ。
「真犯人を探せ」と息巻く当の本人が次々に犯罪を犯していく。そして、結果、この物語の中では真犯人は見つからなかった。導出に至る経過も徒労に終わるかに思われたが、「成敗しに行く」方向にかじを切る。それでも、その決意もドライブするにしたがって冷めていく。そして終幕…

はっきり言って、読了感はあまりない、というのが実際である。胸糞悪いというか、誰も救われないというか…小さい町で起こった凄惨なレイプ事件が未解決に終わること自体が稀有なことであり、その犯人の影すらも感じられなかったところにこの作品の闇の深さを感じ取る。
もちろん、誤認してしまう人物の登場は、唐突感もあり、また、"自白"からそう思わせる効果は絶大だった。そして、私はそういうあり来たりのわかりやすいサインは、「それを疑うべき」と思っていた。だが、それまでのストーリーから、ここは素直に演出したのか、と思ったので「もしかしたら」と思ってしまっていた。新署長の二言目を聞くまでは。

とにかく、「皆さんに見てもらいたい」とはなかなかにお勧めしがたい。いくら主人公たる、少女の母親に寄り添うといったって、このメンヘラぶりでは、あの小人ではないが、愛想をつかしてしまうのも無理からぬところである。
くどいようだが、私が「君縄」を大絶賛しているのとは裏腹にクソ呼ばわりする人もいる。映画というものは、その人が抱えている問題点を浮かび上がらせたり、共感できる人が絶賛するのであって、そこまで思えない人がいても不思議ではない。
言いたいことがわからない、までの駄作ではないが、きっちりとした物語の収束という意味でも、あのエンディングは、いかようにでも受け取れるものであり、もう一つとしておきたい。点数は、75点が精いっぱいだ。