正直、私は、基本的にミュージカル進行スタイルの映画は苦手である。理由はいくつも上げられるが、なんといっても、唐突に始まる歌と、ダンス、そしてそれらに回りまでが感化されていく過程に、である。日常では起こりえるはずのない、突飛な事象。「そんなこと、ないない」(雫 談)だから、どうしても物語に没入できなく感じていた。

吹替えが劇団四季の団員で占められていた「ノートルダムの鐘」などはその好例で、実際ほとんど中身のないストーリーをミュージカル進行でごまかした、と言ってもいいくらいの内容だから、まったく読了感がなかった。
ところが、当方が「登場人物が歌わないミュージカル」とまで評した「君の名は。」は、かいたように登場人物が歌うわけでもダンスするわけでもない。彼らの心情が曲に乗せて語られるという、今までのアニメーション映画史上、初めてといってもいい脚色が多くの観客に刺さったとみている。

つまり、だ。
流れ上、曲の存在が無理筋に感じられないなら、たとえミュージカル映画でも納得できるのではないか…?そういう考えにたどり着いた結果、「グレイテスト・ショーマン」は、実際の舞台でのミュージカル的な出し物が見どころであると同時に、昨今の虐げられる定めの人々にもスポットを当てているように感じた。「これはすごいかも」。
そして、今年3回目となる、封切作品を公開初日に見るという快挙を成し遂げる。
劇場の中は熱気むんむんとまではいかないものの、前回の封切日鑑賞の「今夜、ロマンス劇場で」よりはかなり入っていく。中でも驚いたのは、女性ソロ客の圧倒的な数。それにプラス女性ペアが女性鑑賞比率をますます上げていく。300席強ながら80人越え確実までの入込。男女比は、かようなわけで3:1で女性優位と出た。平均年齢は、若年層も散見されたものの、40代前半と見る。

実在していた希代の興行師の半生を描いた作品で、主人公の幼少時代から描写されるとは驚き。身分の差を乗り越えて婚姻するというところにさっそくファンタジー感があるが、そこはうまく持っていった。事業を起こす際の沈んだ船を担保に持ち出すなど、狡猾な一面もあって、とりあえず事業家として一歩を踏み出すわけだが、うまく行くはずがない。『生きたものが見たい』という娘の一言で、「ユニーク」な人材を広く募集したところ、様々な人物が名乗りを上げる。銀行で出会った小人には直接スカウトに行くほどだった。
かくして、ゲテモノぞろいのサーカスまがいの出し物は、瞬く間に大人気に。だが、それが周りの軋轢を生んでいく。トップスターのヘッドハンティング、当時の英国女王への謁見。その際に知り合った女性歌手とも懇意になっていく。
しかし、好事魔多し。その歌手とは「もの扱い」されたと感じられて契約破棄。しかも、最後のステージで別れのキスをしてしまい、それがスキャンダルに。その前には、乱闘騒ぎから劇場に放火されてすべてが灰燼に帰する。もちろん、全財産を失った主人公。残されたのは、劇団員だけ。しかしその彼らがバックアップしてくれることでようやく彼は立ち直り、妻との絆もとりもどし、大団円を迎えていく。

SINGっぽいな、とは言いようで、「ああ、そう言われて見れば」という感じがした。その点で言えば二番煎じ。人物描写も深く見せてくれたらそれなりだったのに、LGBTを抱える影の主人公や「親指トム将軍」など、主要脇にもう少しスポットを当ててくれてもよかったのに、とは思う。
だが、彼ら弱く、醜いものを怪訝な目で見る、上流社会の鼻持ちならなさは、この映画の真骨頂と言える。世代的には、「鉄道が勃興期」な頃なので、20世紀に入るか入らないかくらいであり、このころの世相としても普通に差別、偏見は跋扈していたことであろう。それが現代にも通じてしまっているところにこの作品の奥の深さを見出す。

確かに主人公・バーナムは、あまり深く考えずに、ユニークな・・・奇形や特技だけの人材を集めて金儲けをすることに汲々としていた。だが、すべてを失って気付かされるのは、その人たちによって支えられ、救われるというラスト前の演出に、大きく心を揺さぶられるところにある。
ミュージカルスタイルであり、もう少しメッセージ性があるかと思われたが、意外なほどストーリーは通り一遍だった。それでも、全米でしり上がりに興行を伸ばした背景には、圧倒的な音楽性の高さと、ミュージカル独特の一体感、ショービジネスという晴れの舞台だからこそ生きるダンスや歌の数々。それらが観客にすとんと腑に落ちたからだと思う。
最後は、まさに「グレイテストショー」(地上最大のショウ)と呼ぶにふさわしい出来で圧巻である。行きつくところ、金や名声ではない、大事なものをバーナムは取り戻せたラストシーンが実に味わい深い。

さて、採点である。やはり、ストーリーが…の一点に尽きる。のべつまくなし歌いどおし、なのも覚悟はしていたが、深さを追求すべき点もあったはず。尺を伸ばしてでも、登場人物に寄り添える作劇の一つや二つは入れておいてほしかった。というわけで、87点とする。音楽、音響は文句なしの100点。アカデミーノミネートが主題歌だけというのはお寒い限りだが、玄人から見ても、そこしかとりえがなかったという証左といえなくもない。