同一劇場での3連続鑑賞。
いままでの小生からするとこのこと自体が特殊な事柄である。
しかも、本来なら一本ずつの料金がいるところが、ここ・パルシネマしんこうえんなら、1200円でぶっちゃけ全興行が堪能できてしまうというのだから恐ろしい。
しかも、だ。普通なら2本立てであってもどっちかしか見ようとしないのが通例であり、その方が劇場サイドとしても儲かるはずなのだが、ここは「もう一本もぜひご覧ください」というプレゼンのチラシまで扉に貼ってあるという、あくなきまでの映画愛に満ちている。

まさに地元・徒歩圏内にあるといっても過言ではないこの劇場のここまでの営業ぶりに感服する。一気にファンに、とまではいかないものの、何を上映するかのチェックは怠るべきでない一館がまたしても浮上したことは間違いない。

上映最終回の君の名は。に対峙する。さすがに終了が10時前、ということもあり、6名のみ。女性も一人いたが、これまたおばちゃんで、結局年齢層は50代前半は揺るぎがない。

勇躍スクリーンに対峙するわけだが、今回ほど、感情の発露が抑えられた上映会は初めてだった。自転車に乗り山を登る、組紐の受け渡し、なんと、カタワレ時の二人の邂逅ですら、おおっとは思ったが、泣きにまで至ることはなかった。
セーフのジェスチャーすら自然に出てきてしまう。確かに、すでにストーリーはおろか、セリフすら完全に手の内。とは言うものの、最後の難関で泣かずにいられるはずが…

ペンが落ちる。だが、ここでもなんとか耐える。「おおおっ」再びセーフのジェスチャー。これは始めて泣かずに鑑賞ができるのか…



「お前は、誰だ」
まさにラスボス。この攻撃にはついに堪えていたものが一気に噴出してしまい、むしろ変な嗚咽すら出してしまっていたのではないかと心配してしまうほどの感情の発露があった。ここから落ち着くまでにしばらく時間を要してしまう。

こうなってくると、三葉の手のひらが開くあたりでももう駄目。あとはまさに流されるままに鑑賞を終える。
「泣いたりしたその後の空は やけに透き通っていたりしたんだ」
「なんでもないや」が流れる。また見てしまった、感動してしまった。もはやこの作品を越えうる青春ラブストーリーアニメーションは輩出しないんじゃないか、とさえ思う。新海氏もすごかったが、やはり奇跡のようなスタッフたちの高め合いがここまでの作品に仕上げたのだと改めて思う。

鑑賞が終わり、あらぬところが開いている。見ると、メインの入り口はシャッターが下ろされ、待合にあった2枚扉が開いているではないか。ここから出ろ、ということらしかった。いやあ。最後の最後まで面白い鑑賞記になったものである。