池井戸潤原作のドラマは、TBS系列でやった「半沢直樹」に代表されるように、しっかりした舞台背景と、骨太な登場人物、そしてそのバックボーンに裏打ちされた、演者の没入感が映像化された時にとてつもない厚みでもって視聴者に訴えかけてくるからこそ、受けたわけだし、実際の文章だけの小説であっても、それが感じられるから読者も付いてくる。
企業体質を題材に持ってこさせたら、山崎豊子(沈まぬ太陽)か、池井戸か、と言われるほどの筆致で迫ってくるわけだが、この映画原作も、某大手自動車メーカーのリコール隠しに端を発している。言わずもがなのスリーダイヤの会社(Fで始まるブランド名といえば感のいい方ならわかる)であり、実際の死亡事故も起こしている。原作が結構オブラートに包んでいるとはいっても史実が裏打ちしてくれるから説得力は半端ない。

それにしても登場人物の多彩なことよ。入ってきたての整備士とキャッチボールできるほどの2代目社長に長瀬、番頭に笹野、整備部隊に六角、対する自動車会社側には窓口になる課長にディーン、課長と真相を暴く関係に至るムロ、グループ銀行サイドでは、自動車会社に対する稟議を通すかどうかを迷う役に高橋、真相を追うジャーナリスト役に小池、社長の妻に深田、そして悪の根源たる自動車会社の専務に岸部、所轄刑事に寺脇という布陣。けして安くはないが、超のつく一流でもない中堅どころが競い合う形になった。ちなみに入ってきたての整備士がジャニーズ系だと知らされたのだが、演技はなかなかにいいものを持っていると感じられた。

実際、2時間程度でまとめる原作なのか、と言われるとかなり厳しいといわざるを得ない。この程度のスピードでは理解できない人がいてもおかしくない。それはいくら登場人物に役名のテロップを入れたとしても同じである。運送会社、自動車会社、銀行。特に自動車会社内部は、品質保証部や販売と部署が入り乱れる。しかもみんなイケメンと来ている。美男子ぞろいで心配することしきり。

映画としての難易度は決して高くない。時系列も入り乱れることなく、すんなり理解できるだろうと思う。だから、もう少し丁寧に描くとか、前後編にして厚みを持たせるかした方がもっとよかったのに、と思う。一本にまとめることの難しさを後半のサラッとした流れが物語っているようである。
そんなわけで採点である。真実に迫る主人公たる社長。しかし、別に車に明るいわけでもない彼が奮闘したその時間というものは、無駄ではなかったといえるのか?金に転ばなかった正義漢と、たちまち困る懐事情を天秤にかけた描写に、苦悩があまりにじみ出ていなかったところは減点だ。子供の描いた文章は反則技。なのであまり加点要素にならない。先にも書いたがいろいろつじつまのあってしまうところに無理やり感を感じずにはいられない。よって81点どまりとする。

多彩すぎる材料に料理人たる俳優の多さ。ぎりぎりうまくまとめました、だが、どうにも読了感が薄いのだ。「血の通った対応」を願う社長と対比的な、「会社のコマ」たるディーン。この二人が最後まで分かち合わなかったラストあたりも、何とはなしに不十分さを浮きだたせる。加害者であり被害者の社長がそれでも苦汁をなめさせられた会社のトラックを使い続けなくてはならないところをもう少し掘り下げておけばよかったのに、と思う。