ニンジャバットマン・・・はっきり言って、界隈がいくら盛り上がろうとも当方が座る可能性はあまりに低かった。まず、私自身がアメコミがそれほど好きではないこと。どんなアクション大作、とか言われても見向きもしないでいる。映画で見るまでもない、という部分もあった。
そして何よりも、日本の技術でアニメにするとは言っても、どこまで本家に迫れるのか、は未知の部分である。たしかにあの「ポプテピピック」を作った神風動画がアニメーション制作をしているという部分がプラスに触れるとは思ったのだが、半信半疑であった。

だから公開が始まり、Twitterでの感想などが流れていてもそれほどでもないかと思っていたのだが…

どうも様子が違う。見たと思われる人の感想が「やばい」のである。もっとも、製作に加わっていた音響畑一筋の岩浪氏のツイートでこれは危機的状況ではないか、と思い知らされる。
岩浪氏のこのつぶやきに当方が反応したっ
岩浪氏といえば、今までないがしろにされがちだった音響をブラッシュアップし、「映画版は劇場で」を実現させた立役者であり、彼の尽力なかりせば、「ガールズアンドパンツァー」の劇場版のここまでのヒットや各地での音響重視上映は起きなかったといっても過言ではない。

それにリプライし、「そこまでお勧めするのならなぁ」と思っていたら、なんと、行きたいと思っていたシネ・リーブル神戸でやっているというのである。これは渡りに船。勇躍行く算段をして、勤務終了後、16時50分の回を購入する。
4階にある「アネックス」という場所。これがなんと、500席オーバーのとんでもない場所だった。ところが当方が購入時点で2席売れている・・・え?3人目?思わず声が出た。結局総鑑賞者数は5人に納まった。この場所、ステージもしつらえてあり、コンサートや演劇をやる場所の方が似合っている。ということは…映画に特化した音響ではないか…少しだけ不安がよぎる。

中世の日本に飛ばされたバットマンとそのファミリー。もちろん、悪役御一同も。なぜか21世紀の愛車・バットカーもあったりして、すでに設定がハチャメチャ。なんといっても城から手が出るとか、どんな発想をしたらそんなことになるのか…しかし、それはまさに序ノ口だった。
装備をほぼ失ったバットマンに彼を「親方」と慕う蝙蝠衆という忍びの一団。彼らが支援することで、悪党一味の悪だくみが露見する。
それは「日本をのっとってしまおう」というもの。かくして動く城たちがなんと、富士山ろくに一堂にまみえて雌雄を決するか、と思いきや、なんと、ジョーカーがまさに彼らをきっちり従え、超絶合体………
変な笑いがこの段階で起こってしまった。きっかけはともかく、ここまでやるか、が目の前に。対するバットマン陣営も負けてはいない。おびただしいかずのサルが人型に擬態、そこにこれまた何万匹というコウモリが憑依し、巨大バットマンを作り上げる。
あとはバットマンとジョーカーをはじめ、あちこちで一騎打ちが展開される。この殺陣は、なかなか実写では厳しいものがあるだろう(CGでできるとはいっても、殺陣の基本がわかっている日本だからこそできる魅了されるものだった)。まあ、それにしても…

日本の人々に別れを告げ、元のゴッサムシティーに帰っていく登場人物たち。なぜか日本のツボを業者に売るキャットウーマンに馬に曳かせた新車?たるバッドカーでイベントに向かうバットマン。ラストシーンにはフフってなった。

さて採点である。
ともかく「勢いがすごい」の一言に尽きる。オープニングはちょっとつかみはOKとまではいかなかったが、中世日本に着地してからのノンストップぶりは、本当に息をもつかせない。その半面、ストーリーは、ハチャメチャ。泣きの要素なんかまったくなく、せいぜい農夫に擬態したジョーカーのシーンくらい。これにしたところで、どうせ化けてるだけなのに、なにやってるの、となって忸怩たる流れであった(もっとも映像表現はかなり買える)。と言って、手抜きをしているところは全く感じられない。全身全霊の映像が、音楽が、擬闘が見ている我々をつかんで離さないのだ。
というわけで初見の段階で96点と、ここ最近ではかなり高めの配点となる。くどいようだが、この作品に、常識とか、時代考証とか、ありえない何もかもなんかを突っ込むのは野暮というものである。いや、むしろ「そんなやつおらへんやろぅ」と画面に向かって正しい突っ込みを入れるのが作法のような気がしないでもない。
なにも考えず、これがアメリカ発のヒーローであることも一切無視して、ただ音と映像の洪水に身をゆだねる。それが正しく、エンタメとはこうであると知らしめる快作であることだけは間違いない。