公開初日から行くべきだったか、という思いをしているのが、この「未来のミライ」だった。その理由は…
レビュー記事が酷評に次ぐ酷評だったからである。

どうせ口さがない、アンチの戯言だろう、と思っていたのだが、それにしては、★1や★2の量が多すぎる。昨年の今頃、といえば、「打ち上げ花火(略)」がこれまたトンデモレビュー数値をたたき出して騒然となっていたものだが、比べてみると、ほぼ同等、あるいは、今作の方がやや下に感じられる事態となっている。

さて、実は当方、「初細田」なのだ。スクリーンで対峙することも含めて、今までの作品にはどれにも触れていない。それゆえ、「ポスト宮崎」の急先鋒たる氏の作品の出来が市井の声では低評価なのが納得できなかった。
いずれ当方の名物コーナー「比較検討倶楽部」は、この作品を軸にいろいろな作品とたたかわせていくことになるとは思うのだが、それにしてもここまでひどい映画だったと思えるのか…

仕事が押してしまい、16時スタートのOSミント神戸3番にはギリギリの入場。しかし、白△で、ほぼ満席を感じ取る。隅っこの一席を認めて購入。三人並び席でとなり二人は女性ソロ二名だった。観客の中には、小学生レベルを連れた家族連れも散見。カップルも意外に多く、2週目土曜日と考えるなら、このくらいは入っていないと先が思いやられる。平均年齢は、大人層が大半であったこともあり、30代後半とする。いわゆる著名俳優の声を聞きに来たと思しきファン層は少なめだと推察する。

このストーリーの最大の欠点は・・・と、いきなりの書き出しなのだが、「4歳児」の描写がこれで正しいといえるのか、どうか、ということである。夏井先生風に言わせてもらうなら、「この作品の評価のポイントは、「好きくない」です」ということになるだろうか?
確かに妹ができて、そちらに気が向き、くんちゃんがないがしろにされることに反抗する気持ちもわからないではないし、男の子といえども嫉妬してしまうのもわかるような気がする。さて、それがわかったとして、ききわけのないくんちゃんがずぅっとそのままで居続けることに徐々に精神がむしばまれていく。まあ、時系列的には冬の出産から半年くらいが描かれているので(自転車のくだりで7カ月で、とかお父さんが言っているのも勘案)、人間的にくんちゃんが成長するのも無理といえば無理だし、いつまでもぐずり、自分を出しっぱなしにするしか、書きようがない。
だから正解なのだが、いちいち「もうわかったよ」と言いたくなる描写の応酬で、すべてのエピソードがくんちゃんむくれる→庭で異変→落ち着く という経緯をたどっているのだ。どこかで違う着地もあればよかったのだが、それもなく、挙句の果てに最後の「家出」のシークエンスのラストの落ちは、あきれてものも言えない状態にさせられる(パンツのところね、そこは誤解無きよう)。

「幼子主人公でやったろ」と思った監督氏のチャレンジ精神は正直に言って買う。それが成功するとかしないとかは二の次。「やる」ことに意義がある。現代を生きる、物も潤沢にあり、プラレールで遊び倒す鉄ちゃんのくんちゃん。基本今まで両親の愛を一身に受けていたのに、妹ができて奪われた思いにさせられるのはわからないでもない。だが「しつこい」のはちょっと違うと思う。
ラストに向かうシークエンスの「ネタばれ」箇所。未来から過去に降下していくわけだが、そこは時系列をしっかり整えていてほしかった。直近のはなしから戦時中に飛ぶわ、敢えてひいじいちゃんが結婚したときのエピソードまで挿入するわ…「それ、要りますか?」そこでの未来のセリフも余分。もっと早回しで見せるとか、おおっと思わせるだけにしておくべきで、敢えて回想的に全部を見せる必要性はない(他がそうなのだから)。
「ははーん、尺が余ったな」。あるいは「もっと説明しとかないとわからないお子様とかもいるだろうからな」というおせっかいのたまものとも受け取れるわけだが、こんな風にくどく見せる監督さんなのだろうか…

さて採点である。実は音楽が…なのだ。ここ最近、音に傾注した作品ばかりに気を取られていたこともあるせいか、劇伴は全く乗れなかった。絵のタッチは、まあ中の上クラス。新東京駅の地下深くに降りるシーンや、その逆に飛び上がっていくシーンの美麗ぶり、大きなエンジンの排気に顔をゆがめるくんちゃんの描写などは特筆すべきところだが、光る一手がぽつぽつでは、大きなプラスになりようがない。
声のキャスティングも、ぎりぎり許容範囲。萌歌嬢の未来ちゃんが見たかったのは偽らざるところ。ていうか、そこで監督、間違ってますわ。
ということで、70点(大まけにまけて)とする。配点の大半は、先ほども書いたが「難しい題材にチャレンジした」ことに対するものであり、だからこういう作風にせざるを得なかったと好意的に解釈した結果である。

家族のルーツに触れていくくんちゃん。ギリギリ駄作に落ちなかったところは、さすが自力で持ちこたえたとする。まあ興行的にはおそらくコナン越えは難しいとみるのだが、これから先のほかのアニメーション映画に触手が動かされている。