2016年10月からの映画館がよい。間もなく丸2年を数えようとしている。
本当に「君の名は。」に出会っていなければ、映画レビューがこのブログのメイン記事になることなど考えられなかったことだし、それでなくても、週一/最低4回はスクリーンに対峙してきている。そんな中にあって、この8月1日は、いろいろな映画の封切日でもあった。
「インクレディブル・ファミリー」/「青夏」/「センセイ君主」。サービスデーで一気に動員を積むやり方、そしてそこからのSNSでの拡散にかけて週末に爆発させたい…営業たちの苦肉・苦心の作と言ったところだろう。

で、当方は一もにもなく「センセイ君主」を選ぶわけだが…近隣でやっている劇場の時間帯があまりよろしくない。
結局、やや小ぶりの6時過ぎ始まりの西宮OSの4番の一角に席を取ることにした。
館内はものの見事に女性客だらけ。最近売り出し中の浜辺美波嬢のファンと思しき男性陣が少し入るだろうと思いきや、男性ソロ客は本当に数えるほど。女性陣もペアやグループばかり。10対1で女性陣優位と書いてもそれほど間違ってはおるまい。平均年齢層は20代後半。家族連れも散見されたので、そのあたりも考慮に入れた。

中二病が入っているのでは、と思しき恋に恋する佐丸あゆは役を演じるのが浜辺嬢なのだが、「キミスイ」で見せた清楚で"男前"な雰囲気とは一転、ドタバタして、落ち着きがなく、オーバーアクションに応じる難しい役どころに挑戦。「こんなこともできるんです」と言われたような気がして、早速つかまれる。
一方弘光先生役の竹内涼真のイケメンぶりにはしてやられる。数学大好きで、ポーカーフェイス。その彼が、とあるきっかけで格好を崩すのだが、そのシーンで、「あ、これって恋の始まりじゃね?」と思わせてしまうから、役作り/演出というものは漫然としていてはいけないと思う。

正直言って、すっごい感動したところとかがあるわけではない。ところが、ただ単に「スキスキ」言っていれば相手が勝手にそう思ってくれると誤解していたあゆはの心情変化も、それに絆される形でしぶしぶ付き合い始める弘光先生の心の揺らぎとかも実際見ていてしっかりと伝わってくる。当方の上げる屈指の演出は、あゆはを待つようなそぶりを見せた弘光先生とばったり校内で出会うシーンのあゆはの「もう会えないと思っていたからまたあえて…」と言ったあたりのウルウルした感じの演技だ。

すべてに決着をつけられる、イケメンなだけではなく結果も残せる弘光先生。卒業と同時に先生と生徒ではなく「男と女」になるラストシーンの導出は、世の女子をしっかり泣かせて、クスッと笑わせる最高の出来になっている。あゆはの「LOVEノート」がここにきて、重大な伏線になっているとは思いもよらなかった。「燃えてなくなっている」と思っていたあゆはの意外性、そして最後に弘光先生の手元に渡り、返信までされているという演出。よもやの感動シーンであった。

というわけで、スイーツ映画ながら、92点という高評価。俳優さんを適正に配置すれば、シリアスでも、ラブコメでも、どちらでもやれることがわかった。「キミスイ」で一躍東宝の稼ぎ頭になりつつある月川監督だが、この作品もドロドロしていないところとか、ハッピーエンドにつながったところとかは文句のつけようがない。
月川組、と言ってもいいガム君(矢本悠馬)の、張っちゃけた演技もなかなか。幼馴染という設定の虎竹役の佐藤大樹は、もうちょっとガンガン攻めてきてくれてもよかったのに、とは思う。なんとモブシーンで、北川景子がランナーとして出演するなど、「キミスイ」要素が意外にあふれているところがいい感じである。
なんでも次回作は、天才的な狂気に満ちた女子高生作家が主役の「HIBIKI」らしい。ホラー的な映像があふれてくるらしいのだが、意外にこれも予告を見る限りではエンタメしているように見える。得意不得意別で、こういう作品ができるのかどうかも見てみたくなっている。