2016年10月からの映画館がよい。3年目に入っている。
本当に「君の名は。」に出会っていなければ、映画レビューがこのブログのメイン記事になることなど考えられなかったことだし、それでなくても、週一/最低4回はスクリーンに対峙してきている。
11/16封切作品も気になっていたのだが、当方の中では、あのMr.ビーンことローワン・アトキンソン演じるジョニーイングリッシュシリーズ第三弾の存在を軽視できなくなっていた。

ぶっちゃけ「名作臭」なんて、これっぽっちも感じ取れない。当たり前だが、B級、人によってはばかばかしすぎてC級に位置してしまいかねない内容だろうことは知っていたのだが、仮にそうでも、見どころというものはあるんではないか…
個人的にはQUEENの伝記的映画「ボヘミアン・ラプソディ」にも心惹かれているのだが(あれだけ予告やっていて、しかも満足度が高いとなれば、見ておかねばとなるのは必然)、まずはこの作品。

寄宿学校だろうか、そこで教鞭をとる元スパイのイングリッシュ。今日も今日とて夜間演習に余念がない。そこへ舞い込む出動依頼。情報漏えいで、引退したスパイにお声がかかったのだ。
まあここでそれこそ、往年の00何とかさんがゲスト出演したりしたら色めき立つところだが、そこまでではなく(でも重鎮の一角だろうな)。ここでもイングリッシュはひと悶着起こしてしまうが、その結果今回のエージェントに抜擢される。
元相棒も見つけていざ任務開始。ハイブリッド車ではなく、なんとこれ見よがしに布きれのかかっている車を選択するジョニー。アストン・マーチンなわけだが、一応ボンドカー並みの装備があることになっている(実際に使われた、ボンドカーをリスペクトしたものになっているよう)。
そこからのドタバタは、もう上げ出したらきりがない。脇の甘い敵役のルーズすぎる警備体制といい、きっちりガス欠になったり。それでも着実に包囲網は狭まっていく。しかし、目先の事しか頭にない政府は、IT富豪を頼みの綱にしようとする。
その彼こそが今回の悪役だったわけだが、牙をむくその時まで、骨抜き同然のイギリス首相。そもそもがマッチポンプだったわけで、そりゃ、問題解決がチョチョイのちょいだったのは当然の話である。なんともお粗末なお話である。悪いことに決定的な証拠は首相の元には届かず、挙句クビ宣告。
しかし、捨てる神あれば拾う神。相棒の妻が乗務している潜水艦まで飛び出してのG12会場乗り込みと相成るのである。

とにかく序盤から笑わす笑わす。なんといっても一番ツボにはまったのは、自分で爆弾を仕掛けておきながら、耳もふさがず、爆風で耳がおかしくなったせいもあって、スパイの癖に大声で怒鳴り散らすシーンである。もともとの出自がMI7の事務員(初回のWIKIで調べた)であり、生まれついて・訓練も十分に施されているスパイではない。それゆえのボーンミスなのだが、こうした細かいネタもしっかり作ってくれるところが面白い。
偽名を忘れたり、ウエイターを演じ切れなかったり…まあ本当に事件が解決するのかな、と思いきやクライマックスは恐ろしい構図を見せつける。
IT派は3Dプリンタで作った銃で攻撃。それを受けるジョニーは何と中世の鎧兜。見事に跳ね返すところが心地いい。ロシアのスパイだった女性にヘリを止めるやり方をタブレットで示された時も、タブレットを放り投げてぶつける体当たり作戦で敵を倒した。最後に彼の持っていたクライアント端末は、もっていた剣で突き刺し粉々に。まさに「アナログの逆襲」を地で行く結末にして、勝利するのだった。

でも、実際問題、ストーリーはあってなきがごとし。ご都合主義が蔓延する事態に苦笑を禁じ得ない。最後の攻撃対象がロンドンアイという大観覧車なのだが、1.6万人にしか影響しない対象にした理由がわからない。警備も手薄。とにかく深みなどは感じられない。レストランの偽ウエイターのシーンでも、海老をフランベするシーンで地べたに落ちた海老をくそ丁寧にサーブするという対応。ここは笑いたかったが、少し引いてしまったりした(調子こいて真っ黒焦げの海老だったら、まだ笑えたのだがね)。
というわけで、88点までとする。正直今年一番笑えた外国映画だし、直接的な表現がすべてに優先しているから、わかりやすいのは好印象。少なくとも「くそ」だったり「駄作」と呼ぶことはできない。年忘れ的な立ち位置としても有効な映画だと思う。