この一週間。実に悶々とした日々を送っていた。
無理もない。「観なければよかった」映画に引っかかってしまい、そのあまりなサッドエンドに「タイトル詐欺」とまで言い出さないと気が済まない状態に陥っていたからだ。

もちろんいつまでも引きずるわけにはいかない。そう思って金曜日のOSシネマズミント神戸のスケジュールを見て小躍りする。「映画刀剣乱舞」の時間割が好転し、いい具合な時間で見られるとわかったからである。
携帯ゲームも、そしてこの「刀を男性に擬人化する」システムも何もわからないでスクリーンに対峙しようとする50歳代男性。猛者以外の何物でもない。実際、出てくるのは純度100%男性ばかり。あの「ガルパン」ですら、役人役で男性は出てきたりするので、ここまで男だらけの映画ってなかなかないものだと思う。

スクリーン8番での上映。ものの見事に女性陣ばかり。たまに男性も入ってくるのだが、カップルで、という感じ。結局私の見立てでは、男性ソロは私一人だった模様である。館内は50人強で公開2週目にしては上出来。女性陣も、ソロの比率が高く、高校生ペアなども散見されたが、男女比はまごうことなき9:1。平均年齢も30代前半に落ち着く。おそらく当該上映回、私が最年長だったろう。

ストーリーは、歴史改変を阻止する刀剣男士たちの奮闘を、「本能寺の変」からの数日間を軸に描こうというもの。ハイ。たったそれだけなんですね。
でも、ほとんどの人がすでに通っている、日本史史上最大の暗殺劇ともいえる「本能寺の変」のIFが語られるとは思いもよらなかった。まあ、開始10分足らずで、本能寺にたどり着き、歴史を変えようとする時間遡行軍とのやり取りで終わってしまったら、それで終了だし、そんな簡単なわけがない。そう。信長は生かされていた、というのがこのストーリーの最大の肝である。
だが、「それが本当」だとしたら…我々も歴史の真実を見逃してしまっているのではないか? それを"知っている"のは、古きにわたって代々受け継がれ、命脈を保ち続けていられる名刀の記憶にあるとしたら…

この歴史解釈は実に面白く感じられた。そして、今回の刀剣男子の中にも、信長に終生仕えた短刀も含まれている。彼の記憶…それこそが信長の本当の最期、ということにたどり着くのである。
このストーリーでは、「信長は本能寺では死なず、また、明智を打とうとするも失敗、うまく居城の安土城に戻るが、そこで秀吉軍に急襲を受けて死去した」ことになっている。実際彼が切腹に使った短刀…薬研藤四郎を秀吉が大事そうに抱えるシーンもあり、まあ、燃え残ったところが若干苦しいところだが最後に見せてくれた。

さて、得点である。
一切ゲーム/アニメ/ミュージカル/舞台を含めて「刀剣乱舞」なるものに触れず、役者陣も舞台からのスライド登板。よって、見たことのある人たちならかなり没入出来たところだが、完全初見と言ってもいい当方にしてみても、「いろが付いていない俳優陣」が刀剣男士を演じていても一切違和感なく感じられた。これが例えば福士蒼汰であるとか、神木隆之介(線は細いですけどね)とか、竹内涼真あたりでやっていたとしたら、それこそ『アイドルばっか使いやがって』となるところである。
彼らがすべて役とマッチングしているか、と言うとそうではない。そもそも誰も髷を結っていない現代風な剣士が異次元で活躍、とは聞こえがいいが、誰からも異論が出なかったのはいささか疑問に感じないでもない。キャスティングが完全にこれで正解か、と言われると難しいところがある(唯一、三日月宗近役の鈴木拡樹は、そのしゃべりがなかなかかっこがよかった)。
歴史改変、正しい歴史とは、を何度も信長に聞かれる宗近。最後の対峙の場面で重みに打ち砕かれる信長が少しだけ不憫に思えた。
というわけで、91点とする。なんといっても殺陣がすごい。相当練習しただろうし、今様な形になっているとはいえ、バッタバッタとなぎ倒す感覚をスクリーンで体感できるのだからすごい。
もう少しコミカルな部分があっても、とは思ったのだが、刀は人を斬るもの。全員おちゃらけていないセリフ回しはむしろ程よい緊張感を醸し出す。

イケメンたちの競演。萌えは男性の専売特許ではない。すでに「テニプリ」「キンプリ」「Free!」など、美青年アニメや劇、映画は腐女子たちを虜にして止まない。男向けの「ラブライブ」「アイマス」「ガルパン」がかわいく見えてくる可能性すら感じてしまっている。主鑑賞層に媚びなかった制作手法にも賛辞を送りたいところである。