月曜日だったか。
あのTOHOシネマズがとんでもない告知をしているようだった。
映画.COMより。
規模が大きいところだから、そして映画製作にも取り組んでいるから、当然実入りも大きいはずである。ところが、スケールメリットを生かせないばかりか、「人件費高騰」を理由に値上げするという。
多分東宝のお偉いさん方の認識では、映画ファンは価格には無頓着だと思われている可能性がある。つまり「100円上げても観にきよるやろ」という魂胆だ。あるいは、「一見さんにはこのくらいで、年に数回見てくれりゃいいから」という商法とも考えられる。
消費税率変更に伴う値上げならまだ納得はいく(現行の1800円の税抜き価格は1667円ほど。10パーセントになったら1833円になるので、切り上げで1900円、はマズマズ妥当)。ところがそれより4か月も前から値上げするというのだ。下手したら税率変更時にさらに100円上げる可能性もなくはない。
ホスピタリティあっての劇場運営であり、言わずもがなの立川シネマシティや塚口サンサン劇場がなぜここまで支持されているのかを分からないわけではあるまい。要するにTOHOシネマズが、現代の劇場運営から浮世離れしたところに着地してしまっていることに気が付いていないのである。

そう言う運営と真逆なのがTCG、テアトルシネマグループである。本当に申し訳ないのだが、あんな名作やこんな感動作も1000円で見させてくれるのである(会員限定/火曜・木曜)。まあパルシネマしんこうえんの「一日何回見ても1200円」には到底及ばないが、都心立地で、ほぼ利益度外視な価格にはびっくりするしかない。
今週は後半にイベントごとがあるので、前半で見ようと思っていて、照準を合わせたのが「女王陛下のお気に入り」である。原題は「THE Favorite」。そのままやないかwこういう邦題なら大歓迎である。

公開からやや日にちが経っていることもあって、場内は10人ちょっとの入れ込み。それでも通らしい人たちがスクリーンに対峙している。
ここ最近、在りし日のイギリス王朝を題材にした映画ばやりで、当方もWikipediaのお世話になりっぱなしである。このスト―リーは期間から言って、統一なったグレートブリテン王国の女王に君臨していた時期のお話で、出てくる人物はすべて実在しているとみられる。
おおざっぱに言えば、右腕としてのマールバラ公爵夫人・サラと女王の間に、下級貴族のアビゲイルが割り込み、女だらけの三角関係を形成する、と言ったものである。
最初は圧倒的な権力の差でアビゲイルが付けいることもままならなかったのだが、通風を患っていた女王に特効薬である薬草シップを敢行、これが女王の目に留まり、一躍女王付きの女官に出世、そこからは、サラとアビゲイルの一騎打ちの様相を呈し始める。中でも鳥撃ちの場面は、アビゲイルの宣戦布告、とも受け取れる、サラが返り血を浴びるシーンが印象的である(前段として、空砲を向けられて腰を抜かしたアビゲイルの意趣返しとも見て取れる)。
そこからのアビゲイルの取り入りっぷりはすさまじい。NTRが、まさかこの作品で見られようとは思いもよらなかった。露骨なセリフたちもドキッとさせられる。
そうして、着々と包囲網を完成させたアビゲイルは、サラを宮廷から放り出すまでに力をつける。見事な下克上である、と言いたいところだが…

得点は93点にした。
せめて登場人物には一度でいいからテロップをつけてほしい。今回、アビゲイル役のエマ・ストーンが際立っていたからなんとか落ちこぼれずに見られたが、知らない俳優さんで撮っていたら、たちまちこんがらがって終了していたであろう。今回は、よく知られたストーリーだったからか、描かれた年代とかの注釈もなかったので、あまり優しくないな、と思ったりもする。このあたりが減点に関わっている。
女三人の丁々発止はなかなかのもの。特に泥風呂でのサラと女王、そばに仕えるアビゲイルの立ち位置の対比で「まだ心は私にあるのよ」と言いたげで得意げなサラと、苦虫をつぶしたアビゲイルの描き方は秀逸である。
そしてラストシーン。子供代わりのある動物を飼っていた女王にとってそれに対する虐待は自身に対する侮辱でもある。それを知って半狂乱になる女王、とりなそうとするアビゲイル。だが、ここで、女王は、彼女の本心を知ってしまったのである。見下すような視線を浴びせつつ、「どうしてこの人を信じて(愛して)しまったんだろう」というなさけないような、諦めきれないような表情が見るものの心をつかむ。

めちゃくちゃに心動かされることはない。むしろ胸糞展開だったりもする。だからと言って読了後にいやな気持ちにもさせられない。適度なバランスと、当時の世情がよくわかる内容にはすこぶる安心した。
ただのイヤミのオンパレードかと思いきや…いやはや、驚きの一本だった。