現在のアメリカ合衆国大統領といえば「ドナルド・トランプ」と即答できる。では「副大統領は?」といわれると、「あれ?誰だっけ?」になる。トランプ氏の前は「バラク・オバマ」と答えられるが、ここでも誰が副大統領だったのか、全くと言っていいほど記憶にない(wikiで調べたところ、現職はペンス氏、前職はバイデン氏だった)。
そしてそのオバマさんの前職といえば、親子大統領の子供版・ジョージブッシュ政権だった。この時代のアメリカは、まさに不遇の時代といえた。言わずもがな、2001.9.11の「同時多発テロ」事件のただなかに置かれたからだ。
その時の副大統領はチェイニー氏であったのだが…この名前は、はっきり言ってよく聞いていて印象深かった。その前のクリントン政権下のアル・ゴア氏(ノーベル平和賞をもらったことでも有名)は別の形で知られていたわけだが、政治的な名声を持っていて、尚且つ知名度も高い副大統領は、wikiで見させてもらったが、のちに大統領になった人を除けば、チェイニー氏を越える知名度を持っている人は皆無と言い切っても言い過ぎではない。

そのチェイニー氏の政治的な駆け引きが副大統領の時どうやって見えていたのか、を描いたのが、副の英語表記である「vice」を原題にしたこの映画だった。
いきなりのアラート音。テレビ画面には、あの忌まわしい、飛行機激突直後のWTCビル。一気に2001.9.11に引き込まれる。だが、次の瞬間、クラッシックカーが、まさしく酩酊状態でふらつきながら田舎道を疾走しているシーンに切り替わる。パトカーに止められ降りてきたのは、若かりし、ディック・チェイニー、その人だった。
この人の成功の影には、内助の功たる、リンの支えがあればこそである。飲酒運転検挙の際に約束させたことが発奮材料となり、よもやここまで出世するとは予想もしていなかっただろう。

政治家を志す前段部分では、それほど目が出るわけでもなかったが、盟友でもあり、師匠でもあるラムズフェルド氏との交流が後に効いてくることになる。
でもなぜか、ハリバートン社のCEOに収まって、一家は平穏無事に過ごしました、めでたしめでたし…って、ちょ待てよwwww

こんな演出を持ってくるんだ。びっくりした。でもここから「副大統領」への階段を一歩ずつ上がっていく様子がうかがえる。なんといっても、子ブッシュのヌケ作ぶりがほぼ誇張なくw描かれているのが印象的だった。パパブッシュ時代にもめちゃくちゃやっている放蕩息子を感じさせるワンシーンもあって、うまく裏打ちしてくれている。
結局「自分」を売り込むチェイニー。でも、結果的には「お前の首は取らないが、裏で糸は引かせてもらう」とみられる、謀略担当という地位にまで副大統領の権限が与えられていくことになる。その最たるものが、9・11以降の中東に対する強硬姿勢だった。でもとうとう<大量破壊兵器>は見つからず。これが決定打となって、政権から石もて追われるようになっていく。

採点は90点だ。
ところどころの演出にはうならざるを得ない。イラク進攻を発表するブッシュ大統領の貧乏ゆすりと、当のイラクの一家の大黒柱の恐怖からくる足の震え。同じ行為でも持つ意味・魅せる内容はまるで違ってくる。よもやの公開討論会のシーンが別でもう一度あるとか、擬似餌が素晴らしい出来だったり。
でも、日本人にとって、チェイニーさんの"裏"の顔はうかがい知りにくい。それは、本国以上に情報が届いていないから。だから「これで知った風」にならないところが、この映画の弱点でもあり、書き足りないと思えるところだった。
それでも家族愛という普遍なものには全身全霊で挑む。このあたりが保守層的に見えるし、映画としてのドラマパートとしても説得力があった。滑っている部分がないとは言えないが、チェイニーのしてきたことは果たして…と評価するにはまだ少し時間が早いのではないだろうか…