正直言って、この作品の二回目はあまり乗り気ではなかった。何しろ、壮大な舞台装置のわりに、一切危機感が感じられず、更にいうなら、人物相関図も込み入ったものを感じない。自損事故で死去する亜衣の父にしても、そこから、うまい具合にスマホをゲットできる強引さは、序盤に描いたから無理に感じないだけで、ストーリーとしてはそれほど成功しているとは思えない。
今回は、そう言ったわけで、「愛と宿命のマグナム」の比較対象にもなる、リブートした本作をもう一度見てみようという企画だったわけだが…

やはり、初見の感覚が上回ることは一切ない。その背景にあるのは、「もうこの世界観って、説明の必要、無いですよね?」という、ファンありきで作った作品であり、すでに出回っているいろいろな設定をあーでもないこーでもないで、探しあぐねた結果が、「香の幼馴染」であり、それが笑ってしまう軍事産業の大物だったというくだりである。
まあ確かに「本名を知らない」幼なじみってどうなんだろう(特に香が気が付かない部分に疑問符が付く/一応「本人とは別人状態になっているから」というエクスキューズはあったが)、と思うし、そもそもそれを幼なじみ、というのか、というところから入らないといけない。しかも幼少時からハンマーを振り回している危険極まりないお子様wwwそんな設定がよくもまあ思いついたものである(褒めてません)。
タイトルが一種の解になってしまっている部分も残念だ。途中に出てくるコンタクトのCMの亜衣、「プライベートアイズ」で眼が一つのヒントにつながっていると思わせたのは虹彩認証という技術があればこそである。これが10数年前の映画だったら「なかなかやりよるなあ」だけれども、今となっては目新しさも何もない。なので途中でメビウスのロックに亜衣の瞳が必要になることはわかってしまったりする。
市街戦のシーンは、突っ込みどころ満載って言うか、その突っ込みすらしたくなくなってしまう。打っているのは実弾でも何でもなく、せいぜいBB弾か銀玉鉄砲クラスでないと、死傷者がここまで出ないのもおかしな話である(南口の最初の襲撃シーンはその最たるもの)。それにしても当たらない当たらないwwwwwwいくら兵器の性能がよくても、かすり傷ひとつ与えられないシステムってどんだけザルなんだろうか?
今までは、獠&海坊主のタッグは「強い」イメージしかないのだが、この作品は相手にならないという弱さの方が際立ってしまう。巨大ドローンとの一騎打ちなんて、逆にどうすればここまでのお膳たてして負けるのか、と言いたくなってしまう。

この作品における香の立ち位置も非常に微妙だ。すでに獠とのパートナーシップは強固になっていることはたびたびのデートで明らかにされている。そして獠サイドも亜衣がそこまで突っ込んでいなかったものの、二人きりの夜景のシーンでそれらしいことをつぶやいてもしている。しかし…せいぜいその程度だった。うならせるようなセリフの応酬もないし、銃撃戦も子供だましレベル。これでは86点というファーストインプレッションから上積みなど望むべくもない。

それでも16:05回の塚口サンサン劇場は、あっと驚く女性客の参集に目を丸くする。3:2で女性優位など、考えもしなかった。60人強、40代前半なのでここ最近のアニメ鑑賞層とかぶっている印象はある。
しかしそれでもせっかくの復活作が、あれほどの人手をかけている割に描き分けのバラバラさ加減にイライラもするし、実際きつめのキャラデザがあってないとも感じられた。
リブート作としての評価は上げたいが、であればこそ、ベストな陣容で臨んでほしかった。