実は、この作品を見るときに気になっていた文言がある。
「フィナーレ」である。
今記事を書こうと思って、この言葉を辞書で調べてみる。
『特に芸術・アートの分野において、最後の部分のことをフィナーレと呼ぶ。』(Wikipedia)
つまり、これで北宇治は、全て終わってしまうのではないか、と想起してしまった。
いやいや、そんなはずはない。ほかの辞書もまさぐってみる。

演劇やミュージカル・ショーなどで最後に出演者が全員舞台に登場する場面。』

そう!「誓い」もあのシーンに関していっていることにもつながるわけで、「いやはや、もっと言葉ってよくよく調べないとなぁ」となっている。

さて、ストーリーは、前回・届けたいメロディで、3年生が引退し、自身は2年生になった黄前久美子を中心とした、北宇治の吹奏楽部が、新一年生を迎えて新たなる部活動を始めていく、というスタートから、夏の全国に向けた、関西の予選大会までを描いている。
「響け!ユーフォニアム」シリーズは、2期放送しているのだが、前作に当たる、「届けたいメロディ」は、2期放送分を再構成したものだった。そして、スピンオフ的な立ち位置ながら、私をはじめとする多くのアニメーション映画ファンを一気にスクリーンに没入させた「リズと青い鳥」は、本作「誓いのフィナーレ」にも絡んでいる作品だったわけであり、今回、のぞみぞは、演奏するにとどまっている。
実は、「リズ」を見ているのと観ていないのとでは、この作品の没入加減は大きく変わってくる。なぜなら、コンクールの自由曲として、「リズと青い鳥」が第4楽章まで通しで聞けるからである。そう。それはすなわち、みぞれの本気の音が聞けるからである。
ただ今回は、言わずもがな、で「響け!」タイトル付きなので、主役は黄前嬢。それを取り巻く人間模様があちこちで繰り広げられることになっていく。

さて、ストーリーは、先ほど挙げたように、新入部員を迎え、夏合宿も終え、関西大会で演奏を終え、「金」は取ったが……という設定。久美子1年の時に全国に行けたレベルとは若干落ちてしまった演奏になったのと同時にモブだと思っていた高校に栄誉を攫われるという失態も失態。ここまで作品を落としていいものか、どうか、とさえ思ったのだが……

そう。思い通りにならないという現実をたたきつけることで「そううまくはいきませんぜ、部活も人生も」と畳みかける憎らしさにはうならざるを得ない。だからこその「誓いのフィナーレ」、すなわち、次回作=久美子三年生、最後の部活に向けた全員の意志統一がそこに展開していたからに他ならない。そこまでわかると「終幕」というフィナーレではない意味で使っているのか、と腑に落ちた、というわけである。

得点は95点となり、残念ながら、今まで鑑賞作で一位を取るまでには至らない。それはひとえに脇筋が多すぎたことと、どうしても「黄前の物語」ではなく、「久石奏の物語」的な部分が見え隠れしてしまい、印象がぼやけてしまったのが痛い。新一年生は曲者ぞろい、ということは予告などでも言われていたのだが、癖が強すぎる連中ばかりで、これで部活が成り立つのか、という側面にはらはらしどうしだった。実際崩壊寸前のところまで追い込まれた部分もある。
それが味になるのか、否か。評価の分かれ目はそこにある。私は若干辛めの評価にしたわけだが、「部活って、そんなもんだったよね」という層には案外すんなりと受け取れられるかもしれない。もちろん、久美子・秀一の恋の行方も、”別れ”が演出されてしまった手前、それで終わりにするのは酷なんじゃね?になったところもある。
実質、二人の世界しか描かなかった「リズと青い鳥」が高評価を得た背景には、二人の物語にしたからこそ、すんなりと腑にも落ちたし、なによりすごい二人だったことがクローズアップされているからこそあの「第三楽章」で感涙にむせぶのである。
今回は、「全力で支えるから」(リズと青い鳥の劇中)という希美の言葉通り、フルートの音色は、「リズ」劇中の通しげいこで見せた、消え入りそうなそれではなく、力強く、響き合うかのような印象があった。だからなのかもしれないが、第3楽章が始まり、フルートの音で今度は涙腺が反応してしまうという現象まで起こってしまった。

今までの集大成でありながら、実は三段跳びで言うところのステップだった、今回の作品。一番部活を真摯に考えていた優子の最期の言葉は、くじけそうな我々にも心に響いた一言になっているところがすごい。そして、ラストシーン。そう。「ジャンプ」するべき時がここにやってきたのである。久美子が部長になる。その時、北宇治の音はどう変容するのか?最初から追いかけていたわけではないが、この作品の”有終の美”はどうあっても観てみたいと思っている。