松坂桃李の抑制のきいた、それでいて朴訥で礼儀正しい侍を演じた演技は、ファン必見だし、殺陣も美しいとさえ思えるものだった。
そんな結構美的センスのあった時代劇の後に選んだのは原作持ち/ドラマ・アニメ化済な「賭ケグルイ」である。
もちろん、ドラマに出ていた配役がそのまま登板するわけだが、オリジナルストーリーとなっているということをwikiで初めて知った。

生徒会でほぼ独裁/権力の頂点にある生徒会長の綺羅莉が、全校生徒を巻き込んだ「代表選挙」をやりだすというのだった。もちろん、歴代のギャンブラーたちは気色ばむわけだが、そこに舞い込んだ別の勢力……ヴィレッジ。階級や奴隷、もちろん上納金も借金もないこの学校の中では異端と言ってもいい組織が徐々に勢力を増しつつあったのだった。

そこに落ちていた木渡が当然のごとくメンバーに名乗りを上げ、4組が一次予選を突破する。
そして迎えた準決勝と決勝戦は同じカードゲームでの対決。しかし、善戦もむなしく、支持率で上回った、村雨/歩火ペアが勝利して、蛇喰/鈴井ペアは敗北することになる。
借金を背負わされることを悔いる鈴井だが、当の蛇喰は涼しい顔。そこへやってきたのは……

学内組織としてのヴィレッジが短期間にあそこまで勢力を伸ばせたことが異様だったし、そこから見えるのは、カルト的な思想だったり、動き。団結が悪いこととは言わないが、あそこまで統率が取れていたはずの学校でこの別の勢力が存在できていることの方が異様だった。
一つ答えを見つけるなら、「歩火がすべて仕組んだことだから会長が黙認したのでは」というものである。もちろん最終的には排除の方向に向かっているから、本当にそうであったか、といわれると難しい。

そうした少し矛盾した流れの中で、採点と行くわけだが、はっきり言ってそんな設定面の不具合や整合性のなさなどはどうでもいい。メインキャラクターたちの競演は、ただただ圧巻、の一言に尽きるからである。
メインの全員が完全なる続投。今回のみの登場キャラ(村雨/歩火/犬八)がさらに厚みを生み出す。特に姉を失い、その傷も癒えないままの村雨天音役の宮沢氷魚の端正な顔立ちがめちゃくちゃ印象的だった(wikiで調べたらあらびっくり。宮沢和史(THE BOOM)の息子さんでクオーター。そりゃかっこいいわけだ)。
キャラとキャラとのぶつかり合い。武器こそないが、そのひりつく一挙一動に目が離せない。ギャンブルエンタメという新ジャンルは、日本映画界にも旋風を巻き起こしたのは間違いない。
かといって、先ほどから言っている矛盾や、語りかけるような解説などは初見に優しいとみるか、やりすぎと判断するかで変わってくる。当方は「やや過剰」と受け取ったが、スクリーンに対峙しているときには感じなかったのだから、これは脚本や操演のなせる業だろう。
得点は93点まで。芝居がかりすぎの歩火の"計画"は、確かに少しの驚きはあったが、ストーリーの根幹をなす設定だけにそこでのひっくり返しはどうなの、と言ったところ。しかし、全員のぶっ飛んだキャラの演技は実に見ごたえがあった。一人ポーカーフェイスの村雨がより引き立つわけだし、このあたりはうまく仕組んだとみている。

映画を見ていてすぐさま気が付いたのだが、ヴィレッジが拠点とする建物は、あの!!「カメラを止めるな!」の撮影場所そのままを使っている。ヴィレッジと生徒会の乱闘シーンは、もしかすると別の場所で撮っているかもだが、あの印象的な場所をこんな大作映画でも使うとは、と驚きを隠せない。
主演の浜辺美波嬢は、これまでの実写ドラマ編などは見てこずに一発勝負だったのだが、なかなか鋭いキャラ作りも完成の域に入っている。次作は「アルキメデスの大戦」だが、これは清楚なお嬢様役っぽいので、このギャップがどう出るかは見ものである。