転職して初めての映画サービスデー。今後、1日が仕事だった場合の動きを検討する上でも、「何時ごろの作品が見られるのか」は注目しているところだった。
神戸駅周辺で18時過ぎ。ほほう。いい時間帯ではないか。
ならば、とOSシネマズ神戸ハーバーランドに飛び込む。ちょうど18:30頃の回の入場が始まっていることで、エレベーターから降り立った直後に現れる10番では「プロメア」がそこそこの入れ込みを発生させていた。

さあてと。
1100円で見るべき作品ということでブラウジング。だから「ゴジラ キングオブモンスターズ」は除外して考えていた(正札で、完全正装して対峙したいと思わせる圧倒があった)。そこで目に留まったのが予告も観ていた「さよならくちびる」である。

主題歌であり、タイトルでもある「さよならくちびる」。作詞作曲が秦基博/歌い手が主役の二人(ハル役が門脇麦で、レオ役が小松菜奈)ということもあり、今後カラオケ等でも注視はしておきたいところである。

インディーズ界隈ではそこそこの人気を持っていたはずの「ハルレオ」が、メジャーに届かず解散することを二人で決める。マネージャー兼付き人のシマ(成田凌)が、ラストツアーを、浜松を皮切りにスタートさせる、というロードムービーである。

ハイ。おしまい。実はこれ以上のお話が進みようがないのである。強いて上げれば、時々で見せるハルなり、レオなりの人となりの掘り下げはあるにはあったが、それって、ハルレオという女性DUOの解散にどれほどの影響があるのか、はわかりにくい話である。
まず、二人がどうして解散に至るのか、という細かい描写がなかった(多分喫茶店で水をかけあうところが決定的といえるのだが、全てにおいて二人が別々の方向に歩いていくというところが印象的ではある)。その上、二人が完全に平行線な考え方になっていて、正直ステージの上であってもお互いを思いやるというか、和気あいあい感が全く感じられなかった。
ここにプロ意識の欠落を見出してしまう。ステージの上で仲睦まじく"演じる"が、一旦袖に下がれば、反目しあう二人、にしておいた方がギャップを楽しめたはずである。それがない。淡々としているのだ。歌だけで売れる時代ではない昨今、実力が中の上程度ではつっかえている上をかき分け、メジャーデビューなど夢のまた夢である。
最初っからバラバラだから、「今さら解散ですか?」と、観ている側はそう思う。破壊されていく関係というカタルシスがない状況で、しかも修復という一大イベントもないままに終わっていく。だから、そこにあるのは人間を描き切らないままに、時の過ぎゆくままに流されるラスト7ライブの模様を見るだけに終わってしまう。
脇筋のとてつもないいらなさぶりは痛々しい。シマの前に所属していたバンドのくだりや暴行(ラストのちょい出演なんかセリフ有りにした理由がわからない)、二人に執拗に関係を持とうとするシマ、でも、一人はメンヘラで一人はL、となったら、それだけで情報量は半端ないのに、それも詳しく描けていない。

大絶賛している垢もあるにはあるが、わかりにくい作品であり、玄人好みしそうな映像作りになっているところは否定しない。なのでファースト72点→70点に微調整。

減点理由は、レオ役の小松菜奈のテキトーなギター演奏に依る。できないんだったら、やらなければいい。まともに弾いているようには見えない演技(一発目の浜松のシーンで趨勢は決まった)は、仮に弾いているとしても残念にしか映らない。そして、最も当方が減点に値すると思ったのは、モブキャラでいいはずの女優が主役を食ってしまう歌唱を見せつけてしまった件である。
→"主犯"は、この二人。
登場の仕方からしておかしかった。「ハルレオ」のヒットぶりを伝える音楽番組のファンへのインタビューで、突然、導入部から編集なしでインサートされるこの二人。そしたら、なんと、突然のように一曲歌い始めるではないか!! しかも、アカペラで「いい歌声」だったところである。これはよくない。門脇/小松両人の歌声が劣っているというのではない。印象付けされてしまうほどうますぎたことである。
この時点でドン引きである。もちろん、歌がうまい、という側面もあってのことなのだが、この番組のプロデューサーはアホですか、としか思えない。アホでないとするなら、基本がわかっていなさ過ぎる。歌を歌うことで感想に変えた、という高等技術をさせてしまった、ということが言いたいとするなら、そこまでわかりにくい映像を提示して、ドヤ顔するプロデューサーは失格だし、それがハルレオの良さを伝えることに資していると感じた監督氏も同罪である。この結果、二人の凡庸な歌声が響かなくなってしまう。
そのインタビュー番組も、インタビュアーがハルしか追わず、レオがないがしろにされたことにいら立ち、席を立つシーンもあったが、印象が悪くなるばかりでいい目は見えない。
さらにこの二人だけは掘り下げてある。結果的に追っかけになり、最終の函館のラストライブでは、サインをゲットできるもののチケット購入までには至らず、岸壁でのストリーミングで留飲を下げるというシーンがあったのだが、そこまで描く必要ってあるの、といわざるを得ないし、できたら室内でラストライブくらい聞かせてやってほしかった。
そう、そのラストライブ。ラストということを感じさせない、憎まれ口といえなくもない珍妙な口上を述べるハル。もちろん、辞めないで―と言った金切り声も聞こえない。こんなみんながみんな、諦めたかのようなラストライブってぞっとする(シマは、ラストライブは最高だったと述べているのだが、多分脳内補正がかかっているんだろう)。
ラストシーンは、ホッコリしたという人もいるかもだが、自分勝手すぎて、草も生えない。この終わりかたより、あの3人が思い思いの道を行く、T字路の別れ的な方が、すっきりしたと思う。「またこの泥沼が始まるのか」というエンディングはいただけない。

悪評だからか、筆が乗ってしまった。
くどいようだが、時間つぶしくらいにはちょうどいいかもだが、見たら突っ込みどころも満載で、軽く鬱になれる。時折インサートされるポエムも全体的な効力はまるでなし。歌詞の羅列の方がよっぽどましである。
今年久しぶりの外れ作品の登場であった。