V6・岡田准一といえば、今やジャニーズ事務所きっての演技派であり、大河の主演だけにとどまらず、日本アカデミー賞ながら、主演/助演をダブル受賞するなど、ひとたび出ればその活躍ぶりや演技は、かなりの評価を得られている。
「海賊とよばれた男」(未見)でもかなりの好演だったし、「散り椿」(未見)の殺陣は美しいとまで表現されるほどだっただけに見逃したのはいたかった。

そんな岡田クン主演の映画「ザ・ファブル」は、そのタイトルのスタイリッシュさもさることながら、単調なピン芸人のギャグに馬鹿笑いするそんな殺し屋がいるのか、というギャップ差にどういう反応が出てくるのかが見ものだった。
冒頭。海外マフィアと手を組むやくざ組織。そこを急襲したファブルこと岡田。のちに佐藤明という偽名を与えられるのだが、このワンシークエンスだけで20人近くを血祭りにあげる。
だが激しすぎる仕事っぷりに、佐藤浩市演じるボスに、大阪に一年殺しをせずに生活しろ、と命令される。自分が愛用し、肌身離さず持っていた拳銃は、禁を犯して大阪に持っていくが、これが功を奏する展開になる。
大阪で面倒を見ることになったのは、ボスと昵懇な間柄の真黒組。表向きは組を標榜していないが、やくざそのもの。面接も終えてファブルの殺し屋の素質を見抜いた組の若頭(的な立ち位置だろう)・海老原(演:安田顕)が世話をし始める。
殺せないとなった時に彼の頭によぎるのはへたれた一般人を装うこと。でもそこにプロとしての計算高さも提示される。瞬時に相手勢力の技量を見極め、対処するなど、殺し屋だからできる芸当である。そこへやってきたのは、以後大きく絡むことになるミサキ。海老原とも関わりがある様だった。そしてそこに今作最大の悪役が出所し、姿を現す……

胸糞展開もさることながら、簡単に人が死んでいく展開はさすがにやくざ映画である。しかし佐藤はとことん命令に忠実である。海老原に誘われ向かった倉庫のシーンでも、息の根は止められるのに瀕死止まりで殺しはしない。最後にクーデターを図った砂川(演:向井理)のアジトでも、殺していないとわかる描写にとどめてある。ファブルを襲名しようと殺しにかかった別の殺し屋・フード(演:福士蒼汰)にしても急所は外してあった。
そして何といってもストーリーに絡みまくった小島(演:柳楽優弥)の恐ろしいまでの悪党ぶりが目を覆う。悪行は数知れないが、結果的に砂川の逆鱗に触れ、たまたま一緒にいたミサキまで巻き込むことになってしまう。

得点は88点だ。
個別の演技はなかなかいい。例えば、海老原役の安田顕なんか、いつの間にここまでバイプレイヤーを確立したの?と言いたくなるし、柳楽優弥に至っては、ほかの作品(響だとか、銀魂)の演技が嘘のような、くずっぷりを披露。このまま悪役のイメージが付きかねないほどの怪演だった。
そのかわり、大きく足を引っ張ったのは、向井理だったり、ミサキ役の山本美月。向井はこの手の作品には向いていないし(やくざには到底見えない)、山本に至っては「しゃべんなっっ」と言いたくなる始末。決定的にスキルや量が足りないとわかってしまうのが残念だ。
某作品で物議をかもした佐藤浩市も、影があるように見せながら、彼自身のバックボーンをもう少し見せておかないと、どうして明を育てることになったのか(実子かどうかも含めて)といった基本的な部分がわからないままで終わってしまう。しかも、彼はご丁寧に大阪に出向いて後始末までやってのけている。どんだけ子離れできていないんだ、と思ってしまう。
岡田演じる明は申し分ないが、妹を自称した洋子を演じた木村文乃がなかなかいいキャラとして描かれている。立ち位置を理解している彼女らしい演技は明をサポートするのに十分だった。
ストーリーは、あまりの出だしに中盤中だるみしそうになったが、そこを幼少期の明の回想をインサートすることで持たせたところは評価したい。そしてジャッカル富岡で大笑いする明は実は人間臭いただの人だったと知らされるのである。

最後に苦言を言うなら、せっかくのレディー・ガガの曲。エンディングだけでなくほかの箇所でも流そうと思えば流せたはず。曲が流れてショータイムが始まると思っていただけにかなりがっかりした。