ロケーション・ハンティング=ロケハン。
映像として映える場所というものを見つけるのがロケハンである。
現実にある風景を使うことが増えてきているアニメーションにあって、ここ最近はデフォルメや改変を極力抑えるどころか、仮に製作協力や実際のスポンサーになっていなくても現実のままを映像にすることが多くなってきている。
「天気の子」にあっては、新宿大ガードから見える夜景をほぼそのまま店名等を改変することなく表現することができている。→アングルはちょっと違うがこんな感じである。
大ガード


これが、あちこち架空だったり、適当に改変されていたりすると興ざめしてしまう。「アロム」とか、デン・キホールとかwもちろん、そのままを使えているということは大半の企業に許可は取っているはずである(逆に言えば、このシーンで別の会社になっているなら、許可が出なかった会社ということを明らかにしてしまう)。
新宿はそんなわけで、新海氏のホームグラウンドだけれども、そう言った権利面でいろいろ手回ししないといけない部分がある。

そして、今回の印象的な新たな聖地として挙げられるのが、代々木会館と、田端である。
8/初旬から解体が始まるとは言われていたが、8/4時点では1Fの仮囲いはそこまで厳重ではなかった。
代々木会館01
代々木会館
代々木会館03


そして、田端である。私はここに来て愕然としたのである。
田端01
田端02


そう。ラストシーン並びに、告白をしようとするシーンがこの道幅では再現できない、ラストシーンの陽菜の背後にあるべき建物が描かれていない、街灯の数が完全に不一致、などなど、「どうした?!」といわんばかりに不具合が出まくるのだ。
・道幅
「初…告白?」の時、カメラはかなり引き気味に二人を追っている。なのでかなり幅はあるように描かれている。だが、最初に帆高が陽菜のうちに行く際は、現実通りの道幅、また、陽菜が宙に舞ってしまう瞬間もそれほど道幅は広く描かれていない。
だが、ラスト。陽菜が帆高に飛び込み、くるっと一回転するほどの道幅は明らかにない。8/4にほくそ笑み、8/11に計測しようと思っていたのだが、肝心のメジャーを忘れたのでやっていない。11/3に再度上京した際にメジャーを手に入れ、夕立に逢いながら計測した結果は、3m強。大の大人が三人ギリギリ通れる幅しかないことは間違いなく、そこであの演技は難しいと言わざるを得ない。
・街灯の数
陽菜がゆっくりと着地するその間に、街灯が一つまた一つと点灯する。まあ、ゆっくり着地、も物理的におかしいのだが、この小道、実際の街灯の数は「3」である。それも改札口近く、真ん中あたり、逆側の入り口に各一本。陽菜が落下してくるのは坂のちょうど中間地点くらい。本来なら2本見えているのがやっとなのに、実際は「5本」も次々に付いていくのである。
この瑕疵については、事前に聖地として挙げられていた方の写真もヒントになった。
・背後にあるべき建物がない
2021年位に計画されたので、「無くても仕方ないか」なら納得できるのだが、この建物については、別記事でしっかりと記述してある。→こちら

田端の描写がかなり現実と食い違っている。そればかりではない。
「次の停留所は、浜松町」。
そう言っているそばにあの印象的な建物が水没しているのを見つけてしまったのだが、このあたりの水没レベルは、正直「日本終了」を想起させるほどである。
→そう。あの大企業が、ほぼ一棟このビルにグループ企業も込みこみで入居していた事実をどれだけの流通フリークが知っているのか?「軍艦ビル」の愛称が通りがいいが、実際デカい。現在の軍艦ビルの様子はこちら。
軍艦ビル

画面では、この傾斜している形が見えたので、すぐ気が付くが、このあたりの水深を測ろうと思っていろいろデータをとって愕然としたのだ。
「何階まで水没しているのか」。
残っている部分は、5フロア程度。ということは…9階部分までが水没していることになる。
1フロアの高さは設計図によれば2.68m。もう掛け算しなくてもいいだろう。浜松町あたりには25mも水深があるのだ!!!

ああ……
調べれば調べるほど、やはりつじつまが合わない。浜松町の標高は、田端より低い3.2m前後。ここを25m程度の水が居座っているとなると、単純に海抜30mくらいまで水が浸入していることになる。
どこまで統一した見解を持っているのか……都心がmクラスすら怪しい(車が完全に水没していないことから)描写もあるのに、レインボーブリッジや浜松町の惨状は、「そこだけが見舞われている」かのようにしか見えない。
ただ、たまたま聖地として回った芝公園からの付随として回った浜松町でまたしても瑕疵を見つけることになったのは「現地主義」を貫いたからといえなくもない。
※2019.11.3 計測完了に伴い、記事修正しました。