「心が叫びたがっているんだ」は、言葉の持つ残虐性を浮き彫りにしつつ、伝えないと伝わらない、という難しい題材を描いた秀作である。
登場人物誰もが心の中に鬱屈したものを持っている。それが元で、順はしゃべれなくなってしまったわけだが、そこに至る経緯も含めて、この作品が伝えようとした命題は実に重い。

拓実の優柔不断さ(ケロッとしているだけ余計罪深い)、菜月の押しの弱さ、大樹に至っては、野球ができなくなったうっぷんが後輩に向けられてしまう。

それでも、ミュージカルをやることに傾いていく4人。実写では、小道具(書き割り?)を壊されるシーンがあったのだが、それはなく、原作にかなり忠実に描いたものと考えられる。

実写で言及のなかった「玉子の妖精」。これは、アニメーションだから許される、ファンタジーの手法だと思うし、それを実写にあえて取り込まなかったのは監督のうまさにあると思う。順がしゃべれなくなったのはメンタルによる抑圧なのであり、他の要因からではない、と言い切った実写の方が納得がいく。

実際のミュージカルシーンも、やはり人間が動いて演じる実写版にやや軍配が上がる。もちろん、原作同様、そんな突発的なことがあった中ですべてがうまく行くのは、「そんなことないやろう」と突っ込みを入れたくなってしまう。

作画は中の上。4年前の作品であり、実写化もされた元ネタ。平均に少し上乗せできるくらいで、万雷の拍手をもって迎え入れる、までには至らない。外れの部類にはないが、もう一味欲しかったところである。90点どまりとする。