自分でやって「やらかした」となるはしご鑑賞は今まで一度もない。
それでも、二人席、隣の40代女性に舌打ちされながら、「引っ越し大名」の演者だけを確認して3番を脱出する。

「天気の子」は、逆側の7番。慌てて入場するが、すでにタイトルも出終わり、場所的には「さるびあ丸」の船上でバイトの入力をやっているところ。つまりもう本編にかなり入り込もうとしていたのだった。

当初からそこまで迷惑にならない場所に席は確保していたのだが、こうなると、やはりウロウロしてしまうことで気が散る方が面倒だ、との考えに至る。そう思って当方は、上映時間中、通路で立ちんぼで鑑賞することを初めて敢行する。

その昔、入れ替え等がなかった時代は、満席どころか、この立たされて映画館で見ることはむしろ当たり前だった。それほど映画の人気がすごかった時代でもあるのだが、いまでこそ価格の高いエンタメになったこともあり、椅子の設備や音響などに特化して客を呼ばなくてはならなくなっている。指定席/入れ替え制、は、理に適っている半面、敷居を高くしている面も否定できない。

そんな中で、1200円とはいえ、金まで出して立ったままみる。しかし、それはそれで別の感情を引っ張り出してくる。
それが「誰にも迷惑かけてません」(陽菜)と言いたげな"演じられる"環境である。
満席に近い環境で、自分の殻に閉じこもって帆高に、陽菜になりきれる。セリフを諳んじられる。歌詞を口ずさみながら自我を崩壊させる。これを座って周りに観客がいる中でできるとは到底思っていない。
だからこそ、今回初めて立ったままの鑑賞になったのだが、これがどうして、「面白い」のだ。

ありとあらゆる行為が全く誰に気兼ねすることなくできてしまう。「大丈夫」のシーンは、今まで一番感情の発露がすごかったんではないか、とさえ思う。そりゃぁ、誰かが隣にいたらあそこまでのことにはできようがない。それをやり遂げてしまう。通路で独演会状態。まさかの「楽しみ方」があるとは夢にも思わなかった。