これは別物だ。
一言、この言葉が出た。
今まで、どんな映画でこういった特殊効果が謳われていても、まったく触手の動かなかった当方。「まあ、好きにやってれば」だった。
だが、天気の子が4DX対応となった時に醸し出されるエモーショナル度は、果たしていかなるものか、想像するだに楽しいという感覚しか思い浮かばなかった。
雨ばかり降る陰欝なシーンばかりだが、空中浮遊もあり、バイクでの滑走もあり、はたまた殴られるシーンも一度や二度ではない。盛りだくさん過ぎて、驚いてしまう。

18回目に当たる今回。当方は、当初109HAT神戸での鑑賞を計画していた。朝一を押さえれば2本くらいははしごできる。
だが、少し寝過ごし、結果的に京都は、イオンシネマ京都桂川まで遠征することになってしまう。
4DX鑑賞はもちろん初めて。ヒットを確約された作品は、こうやって二の手三の手で観客を呼んでくるのだな、と正直思った。
日曜の昼回ながら、入れ込みは5割に切れるほど。プラス1000円はちょっとしたハードルになっているのかもしれない。
だが、開始数秒。音がはっきり明瞭に聞こえるのだ。もっともこれは後で気が付くのだが、ファンの音に負けないように調整されていたのだった。「彼女は鳥居をくぐった」で一番エモーショナルな動きを座席がする。もうこのグワングワンする動きに虜になる。そしてファンが新たな効果音として彩られる。もはや出だしからアトラクションと化すのだからたまらない。

つかまれてしまった私はもう完全に物語の中にダイブしてしまったような感覚にとらわれる。帆高の出だしのフェリーでの水の塊の来襲、揺れる船体、滑り落ちそうになる感覚。よくもまあここまで表現したものだ。
一つ一つの演出に感動する私。タイミングも何もかも、まさに狙いすましたようにそれを持ってくる。
極めつけは、やはりグランドエスケープだ。今までこのシーンはそれほど感動をしなかったのだが、ここ最近の鑑賞回で、一番の感涙ポイントになっていた。
それが浮遊する感覚にサカナの大群の襲来。ここからの帆高を追体験するかのような動きになっているのだから、帆高になりきってしまうことも不可能とは言えまい。
「もういいっっ」からは当方も揺らされながら滂沱の涙を流し続けていた。彼の熱すぎる叫び。陽菜だけいればそれでいい。そんな熱い恋愛ができなかった当方は、過ぎ去った年月と、彼ほどの熱量を持てなかった自分を少し悔やみつつ、しかし彼には自分の道を進んでいただきたいとばかりに応援する。

ラストシーン。ここは今やそこまでの号泣ポイントにならなくなりつつある。それは、彼らが大丈夫だから、だと理解している。歌詞にしてやられた部分はあるが、回を重ねるうちに「君にとっての大丈夫に」なれたことを理解しているからだと思っている。

もっともっと濡れてしまうかと思ったが、それほどでもなかった。期待外れだったわけだが、びしょぬれになるまでに濡れてしまうのも演出過剰か?さじ加減は難しいが、アトラクションとしてみられる「天気の子」の4DXは、映画の可能性を一つ見出してくれるものだった。