大変長らくお待たせした感がある。
ようやく「天気の子」ブームも終焉を迎え、当方の鑑賞記録も25回を一応の最終とみている。
鑑賞回数を積みはしたものの、この作品−−−「君の名は。」−−−を越えうるほどのエモーショナルさは発現しなかった。
そこに至らなかった理由は何なのか?それを比較検討しようというのである。
(1)音楽
実は、音楽面のシンクロ度で言えば、「天気の子」の方が高い。何しろ「愛にできることはまだあるかい」も「大丈夫」も作品がラフの状態で一定の完成度をもって提供されたからだ。
そして、「主人公が歌わないミュージカル」と評した「君の名は。」が、いかに映像に曲を合わせたのかを如実に示している。
おなじRADWIMPSが作っているとはいっても、これだけ曲の印象というものが違ってくるのである。実際、売れている曲がどこで流れていたのか、を比べればよくわかる(「前前前世」はストーリー中盤、「愛にできることはまだあるかい」はクライマックス手前とエンドロール)。
(2)主人公
年齢を合わせたのはどちらも一緒。ただ、学年までは合わせなかった。ここが「天気の子」における面白さである。生身の人間が出会う形にしてあるだけで、「田舎と都会」「入れ替わり」などと言う成分がいい味付けになっている「君の名は。」の方にやはり軍配が上がってしまう。
(3)ストーリー
有無を言わさず、「君の名は。」を断然優位と判断する。入れ替わりのみならず、時間軸の変異・災害に立ち向かう勇気・最後の無理筋な再会。あれほど解析が楽しいストーリー・設定はもう現れないのではないだろうか?対して「天気の子」は、時系列通り、帆高の上京から見ても正味2か月余り。設定の無理やり感が多く感じられ(凪と二人の彼女、チャカ拾い)、物理的瑕疵も一つや二つではない。
(4)エモーショナル度
ようやく当方も帆高に感情移入できるようになってきた。しかし、3回目から号泣に至った、「君の名は。」を越えるまでには到底及ばない。それはひとえに、名優・神木隆之介の渾身の演技があればこそである。瀧が三葉のことしか思っていないのとは裏腹に、帆高は「天気は狂ったままでいい」という自己主張の強さが災いしている部分が大きい。
(5)ラストシーン
破壊力は、曲がすでに前提にあり、それにぴったり映像を合わせてきた「天気の子」の方が、そもそも会えること自体無理筋で、どうなるかわかりにくい「君の名は。」よりも上になるのは仕方ない。「大丈夫 Movie Edit.」自体がすべて号泣に彩られる、そんな映画に仕立ててあるなんて夢にも思わなかった。歌詞の持つ表現力に映像が畳みかけている。これを越えるラストシーンは、そう簡単には出てこないだろう。
(6)総評
2019年単体で見ても、2019年アニメーション映画だけを切り取っても「天気の子」が不動の一位、とは到底思えない。といえるくらい、粗は多く、「もっと手は入れるべきだった」といいたい。それに比べて、「君の名は。」は、やはり1900万人越え/250億越えできる内容だったのだと改めて思う。
この11月末までの鑑賞で70タイトル近くのランキングを間もなく発表するのだが、残念ながら「天気の子」の一位はかなり難しい。名作が立て続けに出たこともあるのだが、やはり設定に無理が多いと感じるところが大きい。積める理由はただ一つ。「大丈夫」でボロ泣きできる環境は、映画館にしかないからである。
ようやく「天気の子」ブームも終焉を迎え、当方の鑑賞記録も25回を一応の最終とみている。
鑑賞回数を積みはしたものの、この作品−−−「君の名は。」−−−を越えうるほどのエモーショナルさは発現しなかった。
そこに至らなかった理由は何なのか?それを比較検討しようというのである。
(1)音楽
実は、音楽面のシンクロ度で言えば、「天気の子」の方が高い。何しろ「愛にできることはまだあるかい」も「大丈夫」も作品がラフの状態で一定の完成度をもって提供されたからだ。
そして、「主人公が歌わないミュージカル」と評した「君の名は。」が、いかに映像に曲を合わせたのかを如実に示している。
おなじRADWIMPSが作っているとはいっても、これだけ曲の印象というものが違ってくるのである。実際、売れている曲がどこで流れていたのか、を比べればよくわかる(「前前前世」はストーリー中盤、「愛にできることはまだあるかい」はクライマックス手前とエンドロール)。
(2)主人公
年齢を合わせたのはどちらも一緒。ただ、学年までは合わせなかった。ここが「天気の子」における面白さである。生身の人間が出会う形にしてあるだけで、「田舎と都会」「入れ替わり」などと言う成分がいい味付けになっている「君の名は。」の方にやはり軍配が上がってしまう。
(3)ストーリー
有無を言わさず、「君の名は。」を断然優位と判断する。入れ替わりのみならず、時間軸の変異・災害に立ち向かう勇気・最後の無理筋な再会。あれほど解析が楽しいストーリー・設定はもう現れないのではないだろうか?対して「天気の子」は、時系列通り、帆高の上京から見ても正味2か月余り。設定の無理やり感が多く感じられ(凪と二人の彼女、チャカ拾い)、物理的瑕疵も一つや二つではない。
(4)エモーショナル度
ようやく当方も帆高に感情移入できるようになってきた。しかし、3回目から号泣に至った、「君の名は。」を越えるまでには到底及ばない。それはひとえに、名優・神木隆之介の渾身の演技があればこそである。瀧が三葉のことしか思っていないのとは裏腹に、帆高は「天気は狂ったままでいい」という自己主張の強さが災いしている部分が大きい。
(5)ラストシーン
破壊力は、曲がすでに前提にあり、それにぴったり映像を合わせてきた「天気の子」の方が、そもそも会えること自体無理筋で、どうなるかわかりにくい「君の名は。」よりも上になるのは仕方ない。「大丈夫 Movie Edit.」自体がすべて号泣に彩られる、そんな映画に仕立ててあるなんて夢にも思わなかった。歌詞の持つ表現力に映像が畳みかけている。これを越えるラストシーンは、そう簡単には出てこないだろう。
(6)総評
2019年単体で見ても、2019年アニメーション映画だけを切り取っても「天気の子」が不動の一位、とは到底思えない。といえるくらい、粗は多く、「もっと手は入れるべきだった」といいたい。それに比べて、「君の名は。」は、やはり1900万人越え/250億越えできる内容だったのだと改めて思う。
この11月末までの鑑賞で70タイトル近くのランキングを間もなく発表するのだが、残念ながら「天気の子」の一位はかなり難しい。名作が立て続けに出たこともあるのだが、やはり設定に無理が多いと感じるところが大きい。積める理由はただ一つ。「大丈夫」でボロ泣きできる環境は、映画館にしかないからである。