日本興行界における「大ヒット」の基準は、興行収入10億円だそうだ。(日本でヒットした映画の具体的な興行収入の目安は10億円です。興行収入が10億円を超えると、一般社団法人日本映画製作者連盟の興行収入10億円以上番組に名前を連ねられます)
この基準に達する邦画は、アニメを含めても1割を切るレベルでしかない。ちなみに興行収入10億は、だいたい、70万人強の観客動員が必要となる(一人当たりの興行収入は、前売り券や特定日割、無料鑑賞、小人価格などで平均すると1300円程度とされるため、10億を1300円で割ると、76万人規模となる。これを例にとると、100万人=13億、1000万人=130億と簡単に計算できる。天気の子の現在の動員/興行収入もこの単価計算でほぼあっている。なお、天気の子には前売り券加算(未使用券)が発生しない&ほぼ正価販売だったたため、単価はやや高めである)。
こうして見てみると、「動員100万人」というハードルが異常に高いことがうかがえる。ところが、新海氏の直近2作品はこのハードルをやすやすと蹴り飛ばしてしまったのである。そこからの大ヒットは今更私が言うまでもなかろう。
そして「アナと雪の女王2」との直接対決をほぼ避けるように、天気の子は終焉を迎えるようである。一部2番館や地方館での上映は継続するようだが、仮にそれらが連日満席になっても、一日数千人規模。大きな積み増しとはならない。
私は、というと、基本ファーストラン終焉となる11/17の日曜日での鑑賞で終わらせたいと考えている。キリのいい25回目、というところも大きい。

MOVIXあまがさきで見る「天気の子」。もうすでに何もかも手の内に入っている当方は、前列に陣取り、殻に閉じこもれる状態を作り出していく。
それでも、耐性がようやくついてきたのか、全体的にボロ泣きに至る、というところまでは放りこまれない。花火大会でもあそこまでエモーショナルな映像なのに感情の勃興がもう一つだった。ラブホのシーンは、二人のやり取りに没入したことで特に帆高のどうしようもなくなりつつある感情のうろたえがビシビシ伝わる。私だって、陽菜さんが透明になっていたら、泣かざるを得ない。
いろいろと突っ込みたいところではあるのだけれど、やはり代々木会館での大立ち回りは我々に須賀と同じ立場に立ち入らせることで、一気に感情移入できる。
そこからのグランドエスケープ、そしてラストの大丈夫。「ああ、尊い陽菜さんを見られてよかった」に帰結しながら、歌詞の持つ破壊力にただただ身をゆだねる。

ラストシーンが見たい。これは「君の名は。」でも言える言葉である。それが見たくてスクリーンに座る。新海氏は、洋次郎は、結局「憑りついて離れない作品」を作らせたら右に出るものはいないと知ることになるのだ。