2019年12月は、本当に見たい映画が目白押しだ。
13日公開作なら、「ぼくらの7日間戦争」に「屍人荘の殺人」、「カツベン!」も、周防監督作だけに絶対笑いどころが多いはずだ。そして運命の12/20。この日で完全に「天気の子」は終焉を迎えるだろうし、SW/ヒロアカ/ヒック/片隅と、いずれ劣らぬ作品ぞろい。27日には私一押しとなっている「シンカリオン」の公開もある。

「ぼくらの七日間戦争」といえば、まさに戦争、という文字がふさわしい、戦車も出てきて、派手なドンパチが繰り広げられるという意味合いがある。実写映画としてのイメージが強く、大人に歯向かう中学生、というコンセプトだった当該作。それもこれも、多彩な出演陣がなせる業でもあった。中でも宮沢りえのデビュー作という方がクローズアップされがちでもある。小室/TMNの「SEVEN DAYS WAR」も確かに懐かしい。
それを知った上での今回の「7日間戦争」は、どちらかというと、親と子供、大人と子供の世代間闘争を描きつつ、現代に持ち込まれ、原作になかった「ネット」の功罪をも浮き彫りにしてくれた。
勇躍ミント神戸のOSに乗り込むのだが……カップル2組にソロ男性二人。この日曜日の18時台の「天気の子」より入りが悪いという、とんでもない状況が現れていた。平均は30台後半なのがまだ救い。

今作では、原作を大胆に改変している。具体的には、・高校生にクラスチェンジ ・主要登場人物は6人 ・原作にはないタイ人の子供が含まれる ・舞台は北海道の架空の町 ・学校に対する反抗ではなく、「キャンプのノリ」が戦争状態に変わっていく ・家族の描写が濃いのは、ヒロインと、建設会社の山咲だが、主役である守は、両親は出ず、妹だけしか出てこない といった具合である。
なのでストーリーも全然違う。当初は「家出」程度のキャンプ地に選んだ工場が、そのタイ人の子供の住処であり、その子供を追ってきた入国管理官に一同が知られることでストーリーがすすんでいくという形をとった。

序盤は明らかに子供たち優位。だが、不意を突かれた坑道からの侵入を許したあたりから、不協和音も出始める。代議士秘書の「ネタばらし/ネガティブ投稿」で一同はネットの攻撃にさらされる。90年代後半の原作小説にはない新機軸であり、今のネット社会に対する警鐘にもつながっているあたりは、「令和ならではの7日間戦争にできているな」とうならせてもらった。
周りの大人たちが「これでバラバラになるな」としたこの作戦は、逆に、嘘やうわべで取り繕っていた6人にその鎧をはぎ取らせることになる。このシークエンスこそ、この作品のだいご味である。本音で向き合える、過去はどうでもいい。それが誰しもの感情を露わにし、むしろ一同の結束が固まるということにつながっていく。
台風が来ているそのさなか、6人がバラバラになる結末しか見えないその時、それが天気の回復とともにキレイに納まるところはよくできているし、いろいろな作品を研究されてきたのかな、と思ったりする。

キャストもおおむね違和感ない。主役級のお二方は、非の付け所のない演技。特に「HELLOWORLD」で恋愛に奥手な堅書を演じた北村拓海の、これまた物怖じして誰ともかかわらないという「キミスイ」の僕並の演じ方に感動すら覚える。芳根京子嬢は、お嬢さんっぽい感じをうまく表現。脇を固めるベテランの域に達した声優陣も見る人が見れば納得の産物である。
得点は、95点。「天気の子」のようなエモーショナルすぎる作劇はないものの、6人が思いのたけを述べるシーンはもう一度見れば、確実に涙腺を崩壊させること間違いなしだろう。とはいえ、天気の子越えに至らないのは、全体としてのまとまりより、もう少し突き抜けた感情のぶつかり合いがある方がよかったから、ともいえる。高校生に年齢を上げたからこそ、そこまで手当てしてほしかったところだ。
主題歌3曲もこの手のサイズの作品ならやや多め。でも、その曲を印象的に使えているところは大きく評価する。当方の十八番にしてもいいとは内心思っている。