キリ番は、一つの通過点である。この作品も、今後これ以上の鑑賞回を記録することは必至なのだが(「君の名は。」で最後、と言い切れたのは35回目。でも、現在46回目)、ファーストランといえる12/19まででほぼ新規上映やかけられる余力のあるシネコン以外は終焉していくとみられている。
当方が見た時点では、終了の公告の出ていなかったosシネマズ神戸ハーバーランドの「天気の子」の上映も、当方の想定通り、12/19で終了する。兵庫県下では、イズミヤ西神戸店内のホールでの上映が継続しているようだが、距離もロケーションも中途半端で行こうかどうしようか迷っている。

半端物・公開終了間際の集まる10番。50人ほどしか入らないのだが、なかなかどうして、最新の箱なだけにクリアな映像と音響でここで見た作品も何タイトルあるか知れない。
ファーストラン最終最後をここで〆られるのは願ったりかなったり。「屍人荘」を見終わっての購入だったが、なかなかな入り具合。真ん中重視で、埋まってなかったB列を予約する。

館内は、カップルも多く、ソロ勢もなかなか。平均は40代前半に設定した。だが、開始直前、高校生風の男性4人組が、当方の右隣にズカズカっというけたたましさとともに入場してくる。そのデリカシーの無さで嫌な予感がよぎる。
開始すぐでも、右隣は携帯をいじったまま。もちろん消音モードなのが救いといえば救いだが、そんなもん、音出していりゃぁ、速攻つまみ出す(職員さんにお願いして)案件だ。
どう見ても集中していない4人組。「だったら、そんな金まで出して座ってこなければいいのに」。不規則な会話は言うに及ばず、とうとう右隣はゲームをし始める始末。
だが、当方であるがゆえに我慢できる。なぜか?すでにあげた懸案事項を再確認すべく、スクリーンに完全に没入していたからだった。船上の帆高を襲う突風の中の木の葉、ヨシっ! アタミビルのエレボタ、よしっ! タオルの去就、確認、ヨシっ! 扇風機の羽根、ヨシっ! ヒルズのエレベーター、ランプ点灯ヨシっ!!……
現場猫よろしく、声にこそ出さないが、今まで上げてきた物理的に妙な点を逐一チェックする。そうでもして、自分の殻に閉じこもらないと、気になって仕方ないのだ。

しかし、そのお邪魔虫が絶大な効果を生み出してくれた。
それはほぼ感情の発露を呈しなかったこと。ラストの「大丈夫」の流れるシーンですら、きっちりとこの目に焼き付けられた(田端操車場が水中に没しているところなどは完全に見えていない部分であったりする)。これには自分でも驚くばかりである。
そう思って劇場を後にするのだが……
要するに真っ白な状態で見たならば、感情の発露は必ず起こる。逆に雑念にとらわれたり、他の感情が上回ってしまっていたら、泣ける作品でも素通りできてしまうことを知ったのだ。
よくよく考えると、映画ってどの作品でもそうだ。途中で「なんだよ、これ」となった作品は概して評価は低い。一方「凄い作劇」や予想外の展開、セリフ回しや、途上で感情移入できてしまった作品は、高評価になっている。前者が「さよならくちびる」であり、後者が「FF14」だ。
「天気の子」も、初見では、「君の名は。」以上にもやもやしていた。それでもラストの大丈夫に引っ張られてここまで来た。その途上で、犯罪ばかり犯しまくる帆高も「それが陽菜を助けるため」という衝動に突き動かされているからこその行動だと理解できて、ここまで積めたのだ。
確かに一番エモーショナル度の低かった30回目。だが、私には、多くの感動に包みこまれ、それこそ体力を振り絞って大号泣し、陽菜と帆高の幸多からんことを願ったあまたの鑑賞回がある。15回目の合唱上映こそ、私の中で一番エモーショナルな上映回だったと断言する。
だから、周りに振り回される回が一度や二度あっても構わない。この作品の評価は、決して変わることがないのだから。