「ひつじのショーン UFOフィーバー!」の鑑賞記の〆に、こんなことを書いた。
去年の年始は「シュガーラッシュ:オンライン」でハズレを引いたわけだが、2020年は何とか踏みとどまった。2020年初の「大当たり」はどの作品になるのだろうか?

実際、ここまで、90点台後半の「有無を言わせぬ大当たり」作は出てきていない。ショーン84/シンカリオン91/寅77。ぶっちゃけ、ハズレ・合わなかった作品ばかりだ。
とはいえ、1/17初日の「ラストレター」は初日に見たいと思っているし、それ以降も結構あたりといえる作品が続いている。楽しみであることに違いはない。

そんな中にあって、今回、わざわざ東京まで行き、ブロガー主催の「語る会」に出向いてまで映画に対して語ろうとしたその根底にあるのは、「どんな猛者がこの世の中に居るのか」を確認する意図もあった。映画脳にまで冒されていない当方が、今回知りえた方の中で、かなりの猛者な方に出会えたのはちょっとした収穫でもあった。

一夜を、秋葉原ではなく、神田のワンカラ店で過ごした小生は、結局何するとなくなってしまって、昼行バスで帰阪することにした。オケも15曲程度しか歌わず、寝ることには向いていないカラオケ店なので、かなり苦労したが、それでも、8時台の大阪行きを捕まえて帰ることにした。

大阪には定刻よりやや早めで到着。唾をつけていた「フォードVSフェラーリ」には十分に間に合う時間帯だ。
久しぶりのTOHO梅田の2番。よくよく鑑賞記を見ると、「天気の子」応援上映の際に使ったきりである。今回は、やや左寄りの席に陣取った。館内は6割程度/300人弱が参集。3連休ということもあり、日曜の夜回でもそこそこに集まってくれたようだ。
最初、予告を見た段階では、「王者・フェラーリを倒す泥臭い野郎の葛藤劇」という意味合いしか見いだせず、そこまで鑑賞の対象にしようとは思わなかった。しかし、どうにもおかしい、と気が付き、公開3日目にして鑑賞と相成った。
大筋では、一大企業・フォードが、レース界の王者であるフェラーリの買収に失敗し、敵愾心を燃やしてレースに参入するといったバックグラウンドがある中で、マットデイモン演じる、カスタムカー売りの元レーサーと、クリスチャンベール演じる、つぶれかけの整備工場経営者でありドライバーという二人がフォードに踊らされつつも一応の目的を達成するという内容だった。
この作品で言われているのは、ミクロ的に見れば、ドライバー兼設計者とまとめ上げるプロデューサーという関係なのだが、フォードという勧進元が関わることで、この二人の間にも不協和音が漂うことになる。
その最たるものが、フォードの123フィニッシュが決まるときの同時チェッカーという提案を受け入れるかどうか、と言ったところに現れている。「お前が決めればいい」というデイモン。そして、「チームとしての勝利」を選択するベール。だが、それは結果的に踊らされ、いいように利用されただけという結末にもやもやとしたものを感じ取ってしまう。
こういった、よそからの力に惑わされてしまう後半より、中盤のレースシーンの、ドライバーに託する指示の場面で、私は冗談抜きで落涙してしまったのだ。そこには、7000回転まで上げてもいい、という指示と、「お前の好きなようにやれ」と同等の言葉が黒板に書かれていたのだ。そこにあるのは、マシンを一番よく知っている彼だから、彼が一番ポテンシャルを引き出せる、そして勝てると踏んだデイモンの名采配とも受け取れるし、それが言えるほどの信頼関係がそこにあることがきっちり描写できていたからである。マジで泣けるとは思っていなかったのだが、これは正直反則である。
家族の描かれ方も若干説明に過ぎるところもあったが、ドライブの最中の夫婦喧嘩などは冗長であっても二人がわかり合える描写としては必要だったと思いたい。
得点は94点。最高峰でもある95以上には少しだけ及ばなかったが、2020年の「初当たり」であることは間違いない。そこにある男性同士の友情は言うに及ばず、すべてのことに真摯に向き合っている二人だからこそ成し得た高見でもあると思う。その部分で言えば、テクニカル的な描写がくどいくらいあってもおかしくなかったのだが、それを極力押さえて人間ドラマに仕立てた手腕はすごいと思う。