私自身、中国/韓国をはじめとして、アジア系の作品は、基本忌避している。なので「パラサイト」も鑑賞対象に上がってくることはない。いくらアカデミー候補だと、背中を押されてもである。
だが、さすがにツイッター評で絶賛の声が大きくなっている「羅小黒戦記」だけは、見ておかないといけない衝動に駆られる。そのタイミングで塚口サンサン劇場が一週間限定でやると知った以上、行く一択となった。

企画上映の最終日の最終回。だが、劇場は恐ろしいことに8割を越える着席率。実際眼を疑ったほどだ。
中に入ってさらに驚く。女性客が過半を占めていたのだ。後ろから入場スタイルなうえに前寄りに座らされたので完全に動向はつかめなかったのだが、男女比は2:1、平均年齢は30代後半あたりとする。

開始一秒。森の中の描写の、少し荒っぽいけれど色遣いで奥行きを感じられたあたりで「これはただものではないぞ」と知る。そして、森に再開発の波が押し寄せるシーンのスピード感!まるで名刺代わりのようなそんな演出が「これは期待できるぞ」という感じをさらに盛り上げてくれる。
妖精・小黒が、友人と見ていた妖精たちや、最強の執行人と関わっていくことで、世界の大きさを知り、自我にも目覚めていくというスタイルのストーリーであり、目新しさはそれほどない。執行人・ムゲンとの筏での旅はさしずめロードムービーだし、はっきりと(小黒にとって)敵・味方を提示しない描き方も、どことなく日本のアニメ演出っぽい風味を漂わせてくれている。ムゲンに捕まった小黒が、逃げる→すぐ捕まるの繰り返しが飽きるほど提示されつつも、二人の関係が変わっていくあたりが実に面白い。
クライマックスは、市街戦になる、フーシーVSムゲンのシーンになるのだが、それこそ息をも付かせぬ手に汗握る肉弾戦をこれでもか、と力技で持ってきた。日本のスタジオも、このシーンに度肝を抜かれたことだろう。

注目の採点だが、94点をツイッターファーストインプレッションとした。
テーマにある、「妖精と人間の共存」とは、異質なものを受け入れないといけない人間側の包容力を試されているように思えたし、ラストシーンで、その懐に飛び込む小黒の行為が、溶け込もうとする努力の表れにも見えて、なかなかにうまい締め方でもあったように思う。
ひとことでいえば「舐めてた」作品。これまた知る人ぞ知るレベルの興行で止まっているのだが、中国のエンタメ製作にかける情熱は、並々ならぬものを感じ取った。