前作「嘘八百」は、結局スクリーンでは鑑賞できず。しかし、よもやの続編が出てくるとは思いもよらなかった。それだけで「見てみよう」と思わされる。
中井貴一も一時の大根イメージからかなり脱却。脇メインの佐々木蔵之介も、「ひとよ」ではあんまりだったものの「記憶屋」でマイナスイメージが払しょく。たまたま出ている作品がかぶったとはいえ、佐々木率が多いのもやはりキャスティングしたい人たちが多くいるからなのだろう。
サービスデーにあげていたのは「サヨナラまでの30分」だったのだが、10番/空き些少と知って、またの機会に譲り、今作を鑑賞することにした。
観客はパラパラ程度(20人弱)。ご執心なのか、女性3人男性一人のグループが、開場と同時になだれ込んでいく。だが、喧騒があったのはここまで。平均年齢は40代後半、女性やや優位という感じだった。
贋作師の佐々木蔵之介演じる野田と、これまた珍妙な作品ばかり手掛ける古物商・小池のタッグがよもや組まれようとは……きっかけは、妖艶な感じのする、名家の娘、という触れ込みの橘志野だった。その美貌に小池はメロメロ。一も二もなく、古田織部の「はたかけ」を取り返す、と言い放つ。
だが、買われた先は、「嵐山堂」。その背後には、フィクサーに、国会議員までもが暗躍する、悪の権化という感じ。野田も、小池も、嵐山堂に一杯食わされて面白くない。かくして、「はたかけ」を取り戻すべく様々な手練手管が繰り出される。果たして本物の織部はどこにあるのか、そして、誰が"騙しきれた"のか??

得点は、89点までとする。
今作の最大の功労者であり、キーパーソンは、広末涼子その人である。和服で清楚な、騙された一家の娘を演じたかと思えば、いかにも高級そうな洋服で一流キャバクラに。しかもそこのキャバ嬢に変身するおまけつき。彼女の七変化を見ているだけで飽きないし、面白い。
中井貴一/佐々木蔵之介の、息のあった掛け合いはまさに続編だからすんなりしたものに受け止められたし、京都出身の佐々木だけにその発音から京都訛りから、全てに違和感がない。
その他の脇を固める人たちも続投。安心して見られる、古美術エンターテインメントだった。
作品に通底しているのは古田織部の「はたかけ」という名器が持っている「ゆがみ」である。織部の器も曲がっている。そして、だましだまそうとする全員が何らかのゆがみを持っている。歪みに善悪はあるのだろうか?と二人して問う中盤のシーンにこの作品のすべてが言い表されていると思う。
織部を詐取されたという謎の女性、それを手に入れた(女性からではなくもともと贋作師の作ったもの)骨董屋、裏で偽物を作って海外に流す国家組織の長、大した眼力もないのに鑑定を請け負う専門家……出てくる人物は程度の差こそあれ、等しく曲がっている。唯一、曲がっていなかったのは、曲げさせられようとしていた陶芸王子こと山田裕貴演じる陶芸家ただ一人だったところにこの作品の救いがある。
なので織部の茶碗がずらずらと出てくる終盤のクライマックスには、度肝を抜かれたし、そこで糾弾される自己中心的な骨董屋・嵐山堂の店主と自分も嵐山堂にしてやられた中井貴一演じる骨董店主との作劇はうんうんとうなづかせてくれるものになっている。
上手い役者がそれほど存在感を出しているわけではなく、お気楽に見てやってくださいね、レベルの作品だが、例えば中井貴一がうんちくを垂れるシーン、館長役の塚地が述べる長台詞とかにこの監督の矜持が詰まっている。語る人がいることで、厚みを持たせようとしたことは十分にうかがい知れる。
ラストの〆方も堂に入っている。この結末自体も度肝だったが、もっとすごいのは、「つづく」(かも?)にしてある点。しかし、フォーマットが決まりつつあるこの作品、もう一作くらいは作ってそれをラストにしたらキレイに納まるんじゃないか、と思ったりしている。