今だから言うけど、この「ジョジョ・ラビット」は、かなり胃もたれする映画であった。
その最大要因は、二重人格、ともいえる、イマジナリーフレンドがヒトラーである、という設定に、である。
ヒトラーといえば、映画でいいように描かれたことが一度もない。現代にヒトラーがタイムスリップするお話「帰ってきたヒトラー」は、現代とナチスに支配されたドイツの対比があまりにも似通っていて、背筋が凍る思いがするようなのだが、基本欧米がヒトラーを描くときは終始悪役である。

ヒトラーに心酔するあまり、10歳ながら、ナチスの組織していた少年隊に所属するジョジョ。今日は、その少年隊が戦い方を学ぶキャンプに出かけられるというのでノリノリである。もちろん、イマジナリーフレンド・ヒトラーも一緒である。
だが、そのキャンプで、ジョジョはタイトルにもなった「ジョジョ・ラビット」というあまりうれしくないあだ名を頂戴する。元はといえば、ウサギを殺せなかったことに依るのだが、悔しさのあまり、キャンプから逃げ出してしまう。そして、ヒトラーにも諭され、友人・ヨーキーの勧めもあって、キャンプに戻るのだが、ちょっとしたはずみが彼にトラウマを植え付けてしまったのだった。
ここからの展開は、まったりするかと思いきや、やり手の母親の出しゃばりでジョジョは何とか軍に貢献できる立ち位置を得るが、それでも心は晴れない。そうこうするうちに、自分の家にとんでもない"来訪者"がいることを知ってしまうのだった。

得点は92点までとした。
私個人的には、愛とか恋とかを語るにしては幼すぎる10代前半の二人のやり取りにほほえましさを感じるものの、極限状態にあり、それでも何とか生きようとするまでに至らないエルサの普通ぶりになんとはなく乗れなかった。
しかし、靴紐というキーアイテムの存在が、この作品に言いようのない深みを与えてくれている。登場当初、自虐的に結べないことを鏡の前で宣言したり、母と出かけた散歩のシーンでは母にいたずらから、左右の靴ひもを結び付けられたり。しかし、吊られてしまった母の靴ひもを結ぼうとするも結べないとわかって悲嘆にくれるシーンは、母との突然の別れと、自身のふがいなさを同時に物語る涙と知ると、こちらも胸をつかまされてしまう。
それでも、エルサとともに外に出るラストシーン前。彼女の靴ひもを結んであげるジョジョの姿に成長を感じ取ったし、大人の階段を一つ上った演出としても感じ取れた。靴紐だけで、いろいろ言い表せる監督氏。今回のヒトラー役もやった、タイカ・ワイティティ氏の卓越した表現力に魅入られてしまった。