今の映像技術は大したものである。
1970年代後半にVFXを多用した「スターウォーズ」(当時は何の添え字もなく、あれがEP.4だと知るのは後々の話)を見せられて、度肝を抜かされてから40年以上。
もはや特殊効果と映画は切っても切れない間柄となっており、さほどそういった効果の必要ない邦画ですら、いくばくかのシーンで使われていることがエンドロールでも確認できる。
この映画……1917(以後このように記載)においては、アナログ的な特殊効果を前面に押し出した。つまり、「全編ワンカット」という壮大なうたい文句である。だが、私をはじめとして、ほとんどの映画通は、「そんな映画できるわけないやろ」と思ったに相違ない。
だいたい、「カメラを止めるな!」クラスのB級映画で、本当に資材も人員も割けない作品なら、そうせざるを得ないところだが、あれだけVFXにも人員が割けられ(エンドロールの特殊効果の人員の多さにぶったまげた)るのだから、そんなしょっぱい、B級映画みたいな無理難題をやる必要がどこにもないからである。
私がこの映画に惹かれたのは、実はそういった「どうやってワンカットのように見せているのかな?」という点に注視したかったからである。だって、基本的にストーリーはあってなきがごとし。起こったことが淡々と述べられるだけだろうし、だから人間ドラマにも発展しにくい。前線では派手な攻撃が展開されるだろうが、撤退したドイツ軍を追いかける形になっているのでせいぜい出くわすのは敗残兵レベル。つまり、捕虜になってしまうとか、敵の攻撃が激しすぎて前に進めなくなるといったマイナス要素はほとんど想定できないのだ。

それでも、当方が朝一からこれを見ようと思ったのにはわけがある。13:50スタートのとある映画の前哨戦ならばぴったりだからだ。
かくして、8時過ぎに自宅を出て、8:45頃に大久保駅に降り立つ。向かうはイオンシネマ明石。久しぶりの訪問である。
しかし、朝一の入場方法がよくわからず、ウロウロしてしまう。実際には、一番手前の1番館/1Fから映画館直通のエレベーターを利用するのだが、9時にならないとオープンしないという不便ぶり。しかも、駐車場などから向かえる人はいち早く入場できていたようで、実際9時2分くらいに着いた6階フロアにはすでに長蛇の列が。
1917は、結局20人余りというしょぼさで上映を迎えた。やはり戦争映画ということもあって、壮年/老年系の男性ソロが圧倒的。何組かカップルは認められたが、女性ソロは一人か二人だけ。平均年齢は50代前半とする。まあ、大半は、某韓国映画に殺到していたようなのだが、当方はよほどのことがない限りそこには至らない。

さて得点だ。
93点をつけたのだが、実際、映像を見せられると、「上手くワンカット風に作っているな」と思わせるだけの編集ぶりで、そこは大きくプラス評価を与えたいと思う。「どうやってワンカット風にしているのか」といえば、主人公が、どうあれ一瞬物陰に隠れるときがカットのタイミングである。一番わかりやすかったのは、敵塹壕の中でトラップが発動したときである。それ以外でも、森を抜けるときに太めの幹の後ろを主人公が通ったり、川のシーンでは岩陰を流れていったり。パノラマ的にカメラをくるりと回した時も主人公が見切れる一瞬があるのだが、そうしたタイミングになっているはずだ。もっと邪推すると、あくまでそういう演出にしてあるだけで、カット入りまくりで作っているかもしれない(つまり編集やVFXで一連の動きと見せかけているだけかもしれない)。
実話をもとに構成したという企画も大きく買える。基本的に主人公から目を離さないカメラのおかげで、臨場感はあるし、カットをシームレスに見せることで本当にワンカットと偽装させるところとかはうまくやったと思っている。
映画を見慣れていない人が見ると本当にワンカットかと感じてしまうような映像演出は大成功しているのだが、所詮は攻撃中止命令をとどける一日を描いたもの。ストーリーやメッセージ性などに深いものがあるわけではない。また、この作品にそういったものを求めてもいけないと思う。
ただ、奇妙な映像体験は得られる。常に付きまとうカメラは、まるで記録映画を撮っているかのよう。至近距離のカメラを一切気にせず自然体で演技するのはなかなかに難しかったはずだが、それを全く感じさせなかったのは特筆に値する。予告でもさんざん使われた、草原を数百メートル疾駆する主人公のシーンは「待ってました」といえる最後のクライマックスだし、前進する味方の兵隊とぶつかり倒されても起き上がって目的を完遂しようとする姿に感動はする。でも、総じて起こるイベントは想定の範囲内で、華やかさも、激しさも、厳しさもそれほどない。
途中でバディを失う局面は「そういうことだったのね」だし、そのシーンに前後して採取したとある飲み物がすごい伏線(いうても、感動までには程遠い)になっていたところは、意外といえば意外だった。
緊迫感、緊張感、そして達成感。すべては得られる2時間余りなので見て損はないが、かといって何かが持って帰られる作品でもない。おすすめはかなり難しいと思っている。