ブライアン・デ・パルマといえば、泣く子も黙る巨匠である。
禁酒法時代を描いたケビンコスナー・アンディガルシア・ショーンコネリーの「アンタッチャブル」、トムクルーズの魅力を爆発させた「ミッション・インポッシブル」の初回の監督としても有名だし、私自身もアクションを撮らせたら外連味のある映像が見られると思っていた。
さて日曜日、何を鑑賞しようかと思ってブラウジング、シネ・リーブル神戸が本作を一週間限定ということで一躍鑑賞候補に抜擢、昼過ぎに元町界隈に到着する。
コロナウィルスの影響で、人では通常の日曜日の半分程度。何といっても場外馬券場の閉鎖は界隈を閑散とさせるのに役立ってしまっている。

79席に対して当方購入時点で22人が座っている。開場すると、来るわ来るわ。いかにも往年の映画ファンと思しき「デ・パルマ見たさ」のコアなファン層が大挙して押し寄せる結果に。シネ・リーブルに当方が通い始めて初めてといってもいいくらい、50パーセント近くの着席率となった。

得点は88点。うーん。実にあんまり乗れなかった、というのが実際である。
その多くが、「別にデ・パルマさんでなくてもよくね?」的な演出の数々は少し目についてしまったからだ。そしてネタフリが前時代的でもあるのだ。例えば主人公が銃を置き忘れてしまうシーンを、これでもか、というくらいにホルスター入りの銃に寄っていくカメラとか、USBのケーブルが出てしまっている引き出しとか。
それでも、「復讐の咆哮」という副題は今回は一応当たっている。ISISに父を殺された男性は、ISISの首謀者に復讐をしようとして一人を血祭りにあげ、その途上で刑事を一人手にかけてしまう。その刑事と不倫関係にあった女捜査官、相棒を失った男性刑事が彼を追うのだが、その男性は家族を人質に取られてCIAの手先として暗躍していたのだった。
込み入っているようで、きっかけとなる「男性の父親をISISが殺した」ことがなければすべては始まっていない。そして、ラストシーンは申し訳ない、思わず笑ってしまったほどの衝撃があった。
ISISは、テロの標的に、何と映画祭を選んだのだが、入り口の段階でマシンガンを撃っているのに、その銃声が会場にも届いていないというのがおかしいし、そもそもVIPが訪れる会場に銃器なしで警備している事態に疑問が残る。同時中継できるほどの手腕には驚くし、そこまで凝らなくてもよかった話だと思うのだが、これがやりたかったのだろうか?
手に汗握る、といった類のアクションもなくストーリーもちょっとしたロードムービー的。この調子で2時間程度の尺だったらダレてしまって退屈だったかもだが、ギリギリの90分弱だったことが評価を下げないで済んでいる。
デ・パルマ氏であっても、興の乗らない作品というのはあるんだな、という思いは消せず、ちょっぴり消化不良だった。