旧作ばかりに気を取られている場合ではないことも事実だ。
そして、一本の映画に目が留まる。
中村倫也主演の映画「水曜日が消えた」である。
中村といえば、「屍人荘の殺人」では、悲運な役どころで彼のファンには消化不良だったところだが、今回は主役である。しかも、曜日ごとに人格が変わる一人の男性を演じるのだから、かなり難しい役どころといえなくもない。

だが映画を見始めていくと、この当初当方が思っていた設定が大きく裏切られていることに気が付く。映画の設定は「曜日ごとに同じ人間が7つの性格・趣味嗜好を保持して生活している」というもの。だから、当然曜日間で引継ぎをしないといけないわけだが、一番性格的に破たんしていない火曜日が、消えた水曜日を担当できるとなって恋バナにも発展していく序盤の持っていき方はホッコリさせられる。
彼がこうなった経緯は、交通事故である、といきなりのオープニングで提示されるわけだが、このときのサイドミラーに写る鳥の数は実に良い伏線になっている。そしてどんどん淘汰されていく別の曜日の人格たち。
それに反旗を翻した月曜日が火曜日に対峙し始める中盤以降は、少しホラー的な面も見せているのだが、携帯の動画を使いながら、シームレスに見せたあたりは、映像的にはうまくても、突っ込みどころだらけになってしまう部分もあった。

思っていた以上に大きな山谷もなく、むしろ平穏無事に過ごせていた7人が巻き込まれていくカタルシスに物足りなさを感じてしまった。というわけで85点どまりとなった。
全体像からすると、「一人(一つの人格)になりたくない」というラスト付近の月曜日らしい言質がこの作品を物語っている。つまり、16年間も別々の人格で生きてきているものが今さら収斂するなど難しい、というものだ。
とはいえ、見た目はひとり。教育は?税金は?まあ両親は事故で死んでいる設定だろうから、どうやってあの生活が維持できているのか、も謎解きはない。幼馴染を標榜した彼女の存在も、実は裏があると知れると見方も変わってくる。

低予算で、いわば「中村倫也を愛でる映画」にした監督の意図はすごく感じられた。脇役も、著名どころは何と主治医(教授?)役のきたろうだけ。しかも押さえキャラではなく、彼を利用しようとした(治療をしていない)役どころになっているところは愕然とする。せめてもう一人くらい、真の押さえキャラがいてくれないと締まらない。ただ、エンドロールでは、7人の僕が個々人の領域を侵すことなく生活できている風に感じられて「そう言う〆にしたんですか」となった。
結局「水曜日が消えた」理由もなにもわからないままに進めたストーリー。いろいろと突っ込みどころはあった作品だった。