6/19封切作の中では、一番人気に推していたのが、この「エジソンズ・ゲーム」である。
もっとも原題は「THE CURRENT WAR」。電流戦争と直訳できるのだが、交流か直流かが、論争になり、実際競争に見舞われていた電気普及の黎明期のお話に、発明王・エジソンと、事業家・ウェスティングハウスが真っ向からやり合う痛快活劇を期待していたのだ。

ところが、序盤で、直流エジソンと、交流ウェスティングハウス(WH)が提示されているのだから、もう勝負は決まったも同然なのだ。そしてそれは、「エジソンズ・ゲーム」という邦題と大きくかけ離れていることを示している。エジソンは、少なくとも電流戦争では敗北するからだ。

結果を知ってしまっている歴史の真実に、どう抗うのか、というところを書きたいのか、と思いきや、「交流は人殺しの電気」としか強弁できないエジソンのなんと哀れなことか。そして、彼は「悪」とまでは言いきれないが、交流をまさしく死の電気に向かわしめる電気椅子の開発に加担してしまう。武器開発には一切手を出さなかった彼が、直流売りたさに交流sageをしてしまうのだ。このあたり、彼も嫉妬深い一人のにんげんだと思い知らされるシーンだ。

シカゴ万博でのエジソンとWHの会話が少しだけわだかまりを解いてくれたわけだが、今普通に使っている電気の黎明期に起こったAC/DC論争を知る上で、エジソンが直流にこだわったわけとかが序盤でもっと言われていないといけなかっただろうし、全体的に駆け足過ぎたところは否めなかった。

というわけで、87点までとした。

原題たる「The Current War」を前面に押し出すなら、すべてをこの電流戦争に充ててほしかった。もちろんその間に起こったことも合わせているのはわかるのだが、ラストも含めて、うまくまとまった、と感じなかったのはちょっと減点だ。