私の鑑賞記録は、実に180本近くになっている。2016.10.1〜のほぼ4年間でここまで作品に触れてきたのだ。
その中にあって、感動したり、はたまた感じ入ったりする作品というのは上位2割ほど。それ以外は、何とはなしに感じてしまったり、もっとひどいと「金返せ」レベルの駄作だったりする。
作品としての優劣をつけるようになったのは、あくまでも「これよりは面白い」といった何かを基準にして決めている部分が大きい。
だが、最初から言っておくが、「T‐34」に関しては、採点のしようがない。どうしてもしなくてはならないとなった時に、当方史上初めての∞(無限大)が付いてしまった。幾何級数的に面白くなっていく感覚というのは、この作品でしか味わえないし、何といっても、「限られた兵装」でどうやって難局を乗り切るのか、という部分に対する答えが全て当方の予想をはるかに上回ってくるのだから、こうならざるを得ないのだ。

最強DC版ということなのだが、上映時間は実に3時間余り。凡庸にならざるを得ない中盤の展開がどう転ぶか見ものだった。
館内は結局全員ソロ男性で5人どまり。平均年齢40歳後半で、当方はギリギリ最高齢を免れる。
開始すぐは、ドイツ戦車に対峙してしまった兵站部隊で行動する少尉が描かれるのだが、その卓越した被弾回避能力にうならされる。撤退戦を余儀なくされるロシア軍に降ってわいた「足止め」させるための殿として、この少尉が車長になって一両だけの抵抗軍が仕向けられる。序盤は一撃で2両を沈黙させるなど快進撃。だが、消耗していくにしたがってだんだん追い詰められていく。
はやとちりな当方は、序盤の一騎打ちで「おいおい登場人物みんなお亡くなりか?」と感じてしまい、中盤に入る前段で少し足踏みしてしまった。逃亡ばかりを繰り返す不屈の男が(髭のせいもあって)車長と気が付くのに少し時間がかかってしまった。もっとも、クローズアップのされ方ですぐにあの方だと気が付くのだけれどw
初見だから、また戦車バトルものだから、ロマンスとは全くの無縁と思いこんでいた節がある。通訳に女性が登用されていた時点で少し気が付けばよかったのだが、むさくるしいだけの戦争映画にこうした淡い恋物語はつきものだ、ということまでは思い至らなかった(いいところまで行くが結局引き裂かれる、とか)。
ここまで「こうじゃないかな」といった私の予想をことごとく裏切ってくれる。終盤の、クライマックスまで突っ走る、あの演習からのノンストップぶりはただただ砲弾と戦車同士の肉弾戦がどのように展開するかに身をゆだねるだけで爽快感とともに緊張感を常に持ち合わせることとなり、もはや「本当に勝てるのか」となるところまで私自身も追い込まれる。

戦車戦を描いたアニメーション「ガールズアンドパンツァー」は、正直言ってそんなうまい事行くかいな、と思っていたのだが、リアルな戦車戦(もちろん実弾)がこうして展開していた時に、二次元のアニメとは比べ物にならないリアル感が出ていて、凄く感心した。ちょっと弾がこすれるだけで、中の人に音響的・振動によってダメージを与えることがここまでリアルに再現できているのは、恐らくスーパーバイザーに現役の軍人さんがいたからではないか、と思う。
序盤の初陣での活躍、後半の逃避行が面白いのは当たり前。むしろ、ほとんどストーリーの動かない収容所生活の中盤の人間ドラマがこの作品に厚みを与えていると思っている。とある町で主人公が語る演説が、我々にとっては知っている過去だけれど、ストーリー上未来を語ったところに言いようのない重みが付け加えられたと思っている。
公開当初から結構やかましく言われていた本作。今頃の鑑賞となったのは少し残念だが、完全版といえるこの作品が初見でよかった。