とうとう正規の公開日を待ち切れず、「先行上映」会に参加するまでになってしまった。
取りあえず事前宣伝も派手にやっていた本作は、菅田&小松という、今後「リアルカップル」に発展しなくもないコンビで映画化しただけに、かなり期待値は上がっていたのだが……

16:10の回を勇躍予約するが、気が付くとタイムアップギリギリの時間帯。こんな時に限ってタクシーは捕まらない。完全に開演時刻ぴったりでしか入場できなかったのは痛い。だが、やはり「先行上映」というキーワードは映画ファンに訴求したのだろう、ほぼ満席であった。

静の漣、動の葵。どちらかというと動の方ばかりに注目が集まりそうになってしまうのだが、このストーリーの最重要キーパーソンは、漣の妻になる榮倉奈々である。
がんに侵されても出産する。そして直前まで生への執着を見せる。金ですべてが解決すると思っている斎藤工演じる投資会社社長、最後の最後で葵をだます山本美月演じるネイルアーチスト。クズの見本のような人たちに付きまとわれる葵のなんと不憫なことか。対する漣は北海道から動かなかったばっかりに最良の伴侶を得ながら、死別してしまうのである。
彼女の育て方がよかったせいもあるのだが、二人の間に生まれた娘さんがいい芝居を見せるのだ。母親のいいつけというか教えを忠実に守る娘さん。2度自発的に行うこの行為に当方の涙腺が激しく反応する。

さて得点なのだが、ツイッターファーストは93点だったのだが、やや落として91点とする。
この作品の愁眉な点は、小松菜奈の食べるシーンである。騙され、事後処理をすべて済ませたシンガポールの屋台街でふと見つけた日本食レストランで食べるかつ丼。「悔しいけれど食べなくては」という意思が感じられてただ箸を進めているだけなのに当方はおかしなことに号泣に至ってしまう。北海道の「子ども食堂」で食べているときにも「ああ、これは子供時代のころを思い出すな」となってここでも当方の涙腺はおかしくなったのだが、この直後に漣の娘さんがやってきて「!!」となるのだ。
東京でもすれ違わせ、まるで「秒速5センチメートル臭いな」と思ったり、歩道橋を葵が歩くシーンで「君の名は。の再来か?」と思わせるなど、昨今のアニメ映画から実写映画に入ってきている層にも訴求するシーンを加えてあるところもなかなか良い。
平成元年から令和までの30年4か月。小松菜奈演じる葵のジェットコースター人生も、一つ仕事に打ち込む菅田演じる漣の人生も、結局は「人」に恵まれているかどうか、という点に集約される。二人の糸が「捻れて絡まって、時には戻って途切れ、また繋がった」作品であることに間違いはない。