まあ、ありていに言えば、「半沢直樹」さえなければ、名古屋界隈で一杯ないし、豪華夕食をほしいままにしたいと思っていた。
ところが、幕間の時間にいろいろ検索すると、大阪難波に20時過ぎでは少し遅いのだ。
上前津→名古屋→大阪難波は、午前中のパターンで行くとしても約2時間45分。逆算すると、名古屋発が17時では少し早いが、17:30では遅いのだ。

16:14にキミコエが終わる。約25分程度の地下鉄乗車、駅間の徒歩までいれると、ちょうど17時発のひのとり67列車がつかまる。照準を定めたら、悔しいけれどすべてをかなぐり捨てて列車と対峙する。
折り返し運用ではなく、引き上がって車内整備を行った車両が入ってくる。さすがは有料特急である。
あえて満席に近かったプレミアムシートにせず、レギュラーを選択したのだが、「いや、これ、レギュラーでもよくないか?」と座った瞬間に確信する。
何しろレギュラーであってもラグジュアリー感が半端ないのだ。私はあえて車端部の1A席にしたのだが、大型テーブルの安定感と、バックシェルシートという、リクライニングが後ろの座席の乗客に気にならない最新設備を導入。シートピッチは驚きの1160mmで、JRのグリーン車と同等というのだから恐れ入る。リクライニングを倒した瞬間、列車のファンになってしまう人が続出したんだろうな、と思った。

定刻に近鉄名古屋を出発。甲特急なので、停車駅は必要最小限。車内で食べる駅弁は、当方のセレクションがよかったのか、めちゃくちゃうまい。これも列車の設備がくつろぎを演出しているからではないだろうか?

正直今回の名古屋行きは、往復バスでもいいかな、と考えていた。乗り換えが最小限で済み、最安値で移動できるからだ。もっとも最安値は「青春18きっぷ」だが、一日のこり券を入手することに失敗、かなり前の段階でこの選択肢はなくなった。
ところが料金的に「中」クラスの近鉄特急を使った移動は、意外なほど快適だった。全線各駅停車の貧乏くさい移動とはうって変わり、直通し(乗り換えなし)、尚且つその車内設備のゴージャスさを味わえるとなったら、時間との戦いを必要としない新幹線を利用するという選択肢がかすんでしまう。
名阪の新幹線が「時間は早く着くがただの移動」手段とするなら、近鉄特急は「楽しさ」を植え付けることのできる手段だといえる。
夜のとばりが覆い始める19時過ぎ、定刻に67列車は大阪難波に到着。追いかけるようにやってきた、三宮行きの快速急行に乗って、一路自宅に歩を進めていった。