前回「はたらく細胞!!」に続き、今回も封切日/ナイト鑑賞ながら、初見となった「ミッドウェイ」。
某関西圏で絶大な支持を戴く有名なパーソナリティー氏も土曜日の映画サロンで絶賛していたことはあったが、直前まで「見に行こう」とは思っていなかった。
封切日にあえて見る。これがいいと感じていたからである。

osミント神戸の6番は、そこそこの大箱。もちろんスクリーンも特大クラスだ。時間帯的にここしかなかったこともあるのだが、ソロ男性・おっさん+リタイア世代が面白いように入ってくる。平均は50代前半。男女比は、3:1で圧倒的に男性優位。斜め後ろの20代後半のカップルが開演直前まで騒がしかったが、本編はおとなしく鑑賞してくれた。

第二次世界大戦ものは、特にアメリカ視点で描かれると、「日本憎し」「悪いのは日本だ」といった偏見に満ちた描かれ方をすることが往々にしてある。戦場での論理ならそれも悪くは見せないし、所詮は殺し合いである。一方が善で一方が悪、という評価は、のちの歴史家が決めることであり、あの瞬間、アメリカが根負けしていた状況も余裕でありえたのだ。アメリカが追い込まれているという状況は、詳しく知らなかったのだが、実は制海権を日本に握られており、アメリカ本土空襲も実際に行われていたのだった。
真珠湾攻撃の苛烈ぶりをCG満載とは言いながら、あそこまで描写できるのだから、今のVFXは本当にすごい。
物語自体は、このミッドウェイ海戦で武勲を残した様々な人たちが主人公になっている。機体の限界に挑戦すべく、無謀なことをやってのけるベスト、真珠湾攻撃の可能性を進言したのにやすやすと日本軍にやられてしまったことに責任を感じているレイトン、新任のニミッツ、そして彼らを支える部下や同僚たち。当たり前なのだが、「それぞれのミッドウェイ」ではなく、「アメリカサイドから見たミッドウェイ」という描き方になるのは仕方のないところかもしれない。
昨今のハリウッドの中国資本の浸食ぶりはこの作品でも発揮された。ドーリットル空襲のシークエンスだ。正直言って、このシーンは本筋とも相容れないし、ストーリーとしても脇筋も脇筋(私もwikiでドーリットル爆撃について調べたが、ミッドウェイでの決戦を企図するきっかけではあっても、時系列的に並列で扱われているところには疑問を呈する)。中国に逃れるまでの記述はまあ良しとして、当時の日本の内戦の相手は、今の台湾(蒋介石率いる中華民国)。日本を爆撃したと知るや、すぐさま手のひら返しには失笑を禁じえなかった。空襲した張本人が、日本軍の機銃掃射で狙われたことで加害者から被害者ポジに寝返る素早さに自分がしてきたことに反省の色もない、アメリカ人のつぶやきは、この戦争の本質をついていると同時に、米中の融和を語っているようで気持ち悪かった。

ツイッターのファーストインプレッションでは95点としたが、やや急落して90点とする。
作品から何を読み取るか、何を信じるか、は人それぞれである。当方は映像表現と、史実にかなり基づいた一連の戦闘の追想映画としては、いくらCGや漫画的表現があろうとも(まあ、後部銃座で面白いように落ちるゼロ戦はありえんわな)実際にそこに飛行機が、機銃掃射が、対空砲火が、甲板を貫く爆弾が描けていることに重きを置きたい。
何といっても、体重まで変化させ、冒頭から存在感を露わにした豊川悦司の山本五十六の熱演は、彼の代表作にすらなるのかも、とさえ思った。國村が五十六役かと思っていたのだが、まさかの南雲役で、かわいそうなくらい存在感がなかった。監督の五十六愛が感じられる映像になっているところはぜひ見ていただきたい。