クリストファー・ノーラン監督といえば、極力VFXに頼らない方らしい。つまり、「作り物の映像ではなく撮ったもので勝負する」方のようである。そして何といっても、カルト的な人気を誇る監督でもある。
当然レビュー界隈は沸騰。時間遡行というアイディアにどうやって撮っているのか、どこまでが順撮りでどこからが逆再生なのか、見てみるしかなかったというのが実際だ。
「ふりふら」アニメ版から5分での予告編開始。それでもトイレだけは済ませて何とか隣りの1番に。もうすでに大半が着席しているのだがこれが今日の一本目、という人も多く、7割越えの着席。男女比は伺えなかったが、やや男性優位だったのではなかろうか?50代前半の平均年齢をとる。

この作品だけは、ストーリーがどうとかにはあまり言及したくない。何となれば、テンポがやや早く、自分でも付いていけてないと思える点が多いからだ。序盤のオペラハウスでのテロ、その後の拷問シーン、救出されエージェントになるくだりあたりで脱落してしまう人も出て来ると思うし、あの序盤で起こることが何に起因するのかがわかりにくいと感じても無理はない。
だけれどもそれこそ「過ぎ去ったことはどうでもいい」とばかりに食らいついていくと結構面白くなっていく。
今回も、オープンセットにどれだけの巨費がかけられているのか、想像もつかないのだが、圧巻は何といってもホンマモンのジェット機をビル(安普請まるだしでしたけどね)に突っ込ませるというシーン。普通ならVFX・CGで誤魔化せるはずなのだが、出たとこ勝負なんだろうか、一発撮りを試みている(何回もやりなおせませんからね)。
逆行・遡行するというアイディアを撮影技術で言うところの「逆回し」で対応したのは面白い。ところどころで自分自身も「今が順撮りか、逆再生か」で困ってしまうシーンがあったもんだから、監督としての目論見としては成功しているとみている。ラストシーンは「そう落としてきたのか!!」と驚愕すること請け合いである。

エンターテインメントとしての側面からなら満点の出来なのだが、やっぱりしっくりこないところもある。よって95点とはした。
観客を煙に巻き、独自の世界観をひけらかすことによって「わからない」「意味不明」といった評価を戴くのはある意味しかたのないところだと思うのだが、そこまで哲学的・浮世離れした内容ではない。むしろ、なぜなにを考えさせず、「起こったことは仕方ない」精神で見続けていくと、案外理解が進むかもしれない。