ネットフリックスの快進撃は止まらない。オリジナルドラマや映画がバンバン作られ、コンテンツは、自社制作のものが結構増えてきているようだ。
映画館で見る事のマイナス面(出向く必要・時間を取られる・スケジュールに縛られる)と、没入感や静粛性を味わう映画館ならではの体験が得られるプラス面とがせめぎ合っている状況だが、定額/新作あり/時間の有効活用 と言った消費者のこれまでの負と呼べる問題を解消しているのだから恐れ入る。

そういったプラットフォームでしか公開されていなくても不思議ではない、クライムサスペンスの一作「21ブリッジ」を見ることにしたのだが、この作品を公開初日に見たいと思った動機はただ一つ。主演のチャドウィック・ボーズマンの遺作となってしまったからである(劇場用作品として。ネットフリックスドラマには2本出演/尚完成は本作が2019年)。
最終出演作繋がりで言えば、自殺してしまった三浦春馬の、「ブレイブ」での松平元康役が記憶に新しいが、彼の場合は闘病の末(大腸がん)ということだそうだ。

幼少のころからの描写の意味はすごく大きい。彼のバックボーンがここで言われるからである。父は警官だったのだが、暴徒に殺される。それが主人公のデイビスの現在の原動力になっているのだ。降ってわいた突然の警察官の射殺事件。しかし、それは偶然だったのか、それとも作られたものだったのか?
本来思っている巨悪や組織の全体像がじわじわと解き明かされていくスタイルは、実にワクワクさせてくれる。
私が、「あれ、これ、おかしいな」と気が付いたのは、連絡係のトリアノ・ブッシュを有無を言わせず射殺した警察関係者のところである。「口封じ」「先に進めなくなる」ことにもつながるからであり、吐かせないところに少し違和感を感じたのだった。
追い詰められる犯人。だが、ここでも、彼は一つのキーワードを残しつつ、誤射とも受け取れる、相棒のバーンズの銃弾に倒れてしまう。とにかく関係者がだれ一人生き残らないままでデイビスは、決定的な証拠をつかむ。

ラストシーンの衝撃には身構えておく必要があるだろう。この手の「捜査してたら、実は犯人・黒幕は身内でした」というスタイルは見飽きているものだが、デイビスを殺しにかかるとは夢にも思わなかった。結果はビターエンドとなるわけだが、法律が悪いのか、マッチポンプスタイルでやらないといけないほど警官の生活が困窮しているのか、定かではないところや、すべてを解決しているわけではないところに少しだけもやもや感が残った。

得点は、92点。警察がシャブを扱うという荒唐無稽な設定があまりに「シャレにならない」というところが大きい。バッジをつけたヤクザが(ブツを奪われた報復に)その戦力や横暴ぶりで市民生活を制限したとも取れるわけで、あまりのやりたい放題ぶりは正直過剰に映った。
マンハッタン封鎖を一夜したことを21本の橋に例えた原題なのだが、ことさらに「21本の橋を封鎖しましたよ」といわなくてもよかったんではないか?「シャットダウン」とか、封鎖を強調する単語にした方がよかったと思う。マンハッタンとほかのエリアを結ぶ橋が21本あることはこの映画で知れたわけだが、それ以外にもトンネルもあるわけで、象徴的な原題ともいいがたい。
中盤で「もしかして」ということがわかっていくとラストに向けたパズルがパチッと合う。だがそれでも玉虫色の結末。勧善懲悪になりきれないデイビスの苦悩じみた顔で〆たのはよかった。